薬作り職人のブログ

新薬のアイデアを考える人から見たいろんな話。

スポンサーサイト はてなブックマーク - スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

このエントリーをはてなブックマークに追加

[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

脳の中のGPS 2014年ノーベル生理学・医学賞 はてなブックマーク - 脳の中のGPS  2014年ノーベル生理学・医学賞

2014年のノーベル生理学・医学賞は、ジョン・オキーフ博士(英ロンドン大教授)と、エドバルト・ムセル博士、マイブリット・ムセル博士(両者ともノルウェー科学技術大教授でご夫婦)が受賞しました。受賞理由は、「脳内で位置感覚を構成する細胞の発見」です。簡単に言うと、「自分が今どこにいるのか」を脳の中でどのように認識するのか、という仕組みを発見した功績です。ノーベル賞発表の時には、ノーベル委員会の人は「脳の中のGPS」という例えをしていましたが、言い得て妙だとおもいます。

ノーベル生理学・医学賞プレスリリース
http://www.nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/2014/press.html

受賞理由に関する資料(Scientific Background:The Brain’s Navigational Place and Grid Cell System)
http://www.nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/2014/advanced-medicineprize2014.pdf

 医学・生理学賞に欧州の3人「脳の空間認識」解明(NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141006/k10015173391000.html

 

オキーフ博士は、脳の中の海馬に「場所細胞(place cell)」という細胞があることを発見しました。場所細胞は、動物が特定の場所にいる時にだけ活性化します。オキーフ博士の実験はとてもシンプルで、ネズミ(ラット)の脳に電極を差し、ラットの運動と脳の神経活動を記録しました。そして、ネズミの場所と神経活動を対応付けてみると、ある特定の場所でしか反応しない細胞が見つかったのです。これは、ネズミがいる地点(点)に対応して、脳の中に細胞(点)が対応するということになります。この細胞は「場所細胞」と名付けられました。それぞれの場所に対応する場所細胞が存在することで、動物は脳の中に自分の位置を知るための地図を作ることが可能、というわけです(私達がGPSで緯度と経度を決めてやれば、特定の場所が指定できるのと同じ感覚であり、まさに「脳の中のGPS」と言えます。また、オキーフ博士は、場所細胞が記憶機能を持つことも示しました。場所細胞が記憶機能を持っているということは、「今、自分がいる場所」を知るだけでなく、「以前、自分がいた場所」も知る(認識する)ことができる、ということを示しています(カーナビで言う「ドライブ経路の記録」みたいなイメージでしょうか)。

 2014 10 06 Fig1

Place cellsのイメージ(Scientific Background:The Brain’s Navigational Place and Grid Cell Systemから)

エドバルト・ムセル博士、マイブリット・ムセル博士は、場所細胞と似た働きをする「グリッド細胞(grid cell)」を発見しました。グリッド細胞は、海馬のそばにある嗅内皮質とよばれる脳の部位に存在します。場所細胞が、「自分がいる点」を表すのに対し、グリッド細胞は、「自分がどの領域にいるか」を表す細胞です。ネズミを用いた両氏の研究によれば、グリッド細胞により、ネズミは6角形単位(6角形の頂点)で自分のいる領域を判断しています。また、脳の中には、この機能をサポートするために、頭がどの方向を向いているかを知る細胞(Head-direction cells )、障害となるものに反応する細胞(border cells )も存在します。これらの細胞の助けをかり、「どの領域にいるか(grid cellの情報)」と、「どの点にいるか(place cellの情報)」を組み合わせることで、自分の位置を割り出すことが可能というわけです。
 

2014 10 06 Fig2

Grid cellsのイメージ(Scientific Background:The Brain’s Navigational Place and Grid Cell Systemから)

 

これらの発見はネズミを用いた実験で得られましたが、fMRIなどの脳機能検査法を用いることで、ヒトでも同様な仕組みがあることが明らかになりました。ネズミもヒトも同じ仕組で自分のいる場所を認識しているというわけです。

 

生物が生きていく中で、自分がいる場所を認識し記憶することは、とても重要です。日々移り変わる環境の中では、「どこが危険か」「どこで餌が採れるか」「どこに味方がいるか」などの場所と記憶を結びつけることなしには、生物は生きていくことが出来ません。空間認識というのは、まさに「生き物の生存の根本に関わる仕組み」です。

 

ノーベル生理学・医学賞は、ここ数年、「細胞や分子レベルでの生き物の仕組みの解明」での受賞が続いてきました。「ノーベル化学賞と生理学・医学賞の違いは何?」なんて思うことも時々ありましたが、今年の受賞内容は「生き物が環境の中で生きていく仕組み」を丸ごとの動物を用いて解明した点で、「生理学・医学」の名にふさわしいと思います。 

 

 




このエントリーをはてなブックマークに追加

[ 2014/10/06 22:21 ] お薬作りの日記 | TB(-) | CM(0)

「ちょっと違った方向の差別化」 はてなブックマーク - 「ちょっと違った方向の差別化」

「差別化」は、あらゆる業界において成功の鍵となる要素です。薬作りの世界では、今、「差別化」をどうやって実現するか、について、いろいろな人が頭を捻っています。薬作りの世界での「差別化」は、一言で言うと「新薬を開発するにあたり、現在の治療薬に対してどのような違い(=売り文句)を設定するか」ということです。

 

このような「差別化」にで、すぐ思いつくのは「治療薬が存在しない病気の薬を作る」という考え方です。例えば、アルツハイマー病の治療薬としては、進行を遅らせる薬(アリセプトなど)は使用されていますが、「進行を完全に止める薬」や「低下した記憶力を改善する薬」は存在しません。もし、アルツハイマー病について、「進行を完全に止める薬」や「低下した記憶力を改善する薬」をもし開発できたら、今までにない薬を創りだしたことになるわけなので、比較対象がないという意味で、完全な「差別化」となります。

 

ただし、このような薬剤は、開発するのも非常に難しいものです(だからこそ、治療薬がない)。ご存じの方も多いと思いますが、新薬開発、特に臨床試験では非常に多額の資金がかかります。そんな中、臨床試験の最終段階で有効性が得られなかったり副作用が発症したりして、開発中止となると、そのダメージは非常に大きなものがあります。先にあげたアルツハイマー病治療薬の場合でも「米国リリー社、アルツハイマー型認知症治療薬Semagacestatの第III相臨床試験の予備段階の結果により開発を中止」や「米ファイザーとJ&J、アルツハイマー病治療薬の開発中止」など、大きな損失を伴う開発失敗のニュースをよく聞きます。そのため「治療薬が存在しない病気の薬を作る」という考え方には、大きなリスクを伴います。

 

となると、今、治療薬が存在する病気(=ある程度、薬の成功確率が高いと思われる病気)の中で、いかに「差別化」を行うか、という話になります。このような病気の代表としては、高血圧や糖尿病、関節リウマチ等が挙げられます。このような病気の治療薬は、薬の売上ランキングの上位を占めており、現時点での安定した需要と高齢化などによる更なる需要の拡大が見込まれています。

 

製薬会社としては、このような「ありふれた病気」に対する新薬を、重要な収入源として常に作り続ける必要があります。その理由としては、「新薬を開発してもジェネリック医薬品の参入により、いずれはその売上の多くが失われる」「アルツハイマー病治療薬のような開発リスクの高い薬剤開発の研究費を支えるために安定した収入源が必要」などが挙げられます。

 

ただ、研究者や企画部門の人間にとって「治療薬が存在する病気における薬の差別化」をどのように成しうるか、という課題は難題です。「差別化」とは、「患者さんのニーズ」を、「データというサイエンスの言葉で表す」という言葉に尽きると思うのですが、後半の部分が特に難しいのです。

 

 

というわけで、サイエンスの世界とは若干違った方向への「差別化」を指向する場合もあるようです。

 

この数ヶ月、いろいろと目が回るような忙しさだったのですが、そんな中、あるシンポジウムに参加させてもらいました。産官学連携をうたうそのシンポジウムには、製薬会社の人間も含め、数百人が参加。狭い業界ということで、こういう集まりでは、知った顔に出会うこともよくあること。今回も、知り合いに出会って色々と話をしました。近況の話をひとしきりしたあと、ちょっぴりお仕事の話になりました。

 

そんな中で、一番盛り上がったのは「ちょっと違った方向の差別化」の話題。知り合い(彼)によると、彼の会社では差別化の要素として「薬のネーミング」にポイントをおく方針を決めたそうです。「薬のネーミング」というのは、サイエンスの世界とは方向が違いますが、商品としての「薬」を考えた場合、それはそれで重要な要素を持つようです。彼の会社で、「ネーミング」の議論が出てきた背景としては、、、

 

・今の薬は、外来語っぽいものも含め、とにかく名前が覚えにくい。

・カタカナの羅列で、似たような名前の薬が多く、とにかく名前が覚えにくい。

・昔は、ダジャレのような、耳に残る、インパクトがある覚えやすい薬が多かった。

 

たしかに、これらの指摘は納得できるところが多いです。例えば、ダジャレのようなネーミングの代表格としては、解熱鎮痛剤の「カロナール」。インタビューフォーム(http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1141007C1075_3_01/からダウンロードできます)によれば、名前の由来は「「熱や痛みがとれて軽く、楽になる」の意味」。熱が下がって、体が軽くなーる、まさに頭にすっと入ります。

 

高齢化社会が進行する中、これから患者層の大部分を占めるのは「ダジャレ」や「オヤジギャグ」が大好きなおじさんたち。その人達のニーズに答えるべく、「薬のネーミングに、再びダジャレやオヤジギャグの要素を取り入れる」という方針を、全社的に差別化の主軸に取り入れたようです。

 

彼の会社では、薬の名前のネーミングを、社員総参加の「ダジャレ大会」(大会名は、M-1とかR-1とかが流行っている世の中にあわせ「D-1」(DはダジャレとDrugを掛けてる?))で決めるとの噂も流れているとのこと。。これが真に「差別化」かどうかはともかく、いろいろな見方があるものだとは思いました。こういう大会なら、沢山アイデアを出したいし、出てくると思うのですけどね。。。。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さて、今日は4月1日。毎年恒例のエイプリルフールネタでございます。

今年のネタは、「というわけで、サイエンスの世界とは若干違った方向への「差別化」を指向する場合もあるようです。」以降の「薬のネーミング」の部分です。全社あげた「ダジャレ大会」があったら、ほんとに気合を入れて臨みたいものですが。ただ、ネタ以外の部分に関してはウソではなく、薬作りの世界で今一番しんどい部分であり、毎日毎日、仕事の中で、研究者の方と一緒に頭をひねっているところです。疲れた頭を癒すためには、「ダジャレ大会」的な頭の体操が合ってもいいかな、とも思うのですけどね。

 

 


このエントリーをはてなブックマークに追加

[ 2014/04/01 21:26 ] お薬作りの日記 | TB(-) | CM(0)

「ツチノコ見つけた」のか、「ツチノコみたいなものを見つけた」のか。 はてなブックマーク - 「ツチノコ見つけた」のか、「ツチノコみたいなものを見つけた」のか。

今年初めての更新になります。この3ヶ月、盛り上がった話題といえば、やはり「STAP細胞」をまつわるさまざまなニュースでしょう。

 

STAP細胞のコンセプトは、「体内での役割が定まってしまった細胞(分化した細胞)を、体外からの刺激だけで、体の様々な組織の細胞(そして一個体)に変化しうる多能性細胞に変える事ができる」ということでした。私にとっては、「体外からの刺激だけで」というところが、実に興味深いところでした。遺伝子導入のような人工的刺激ではなく、生体内での極端な刺激(酸性刺激、圧力、細菌毒素)において起こる現象ということは、ガンなどの疾患に関する発生メカニズムと関連性があるのではないか、と思えたからです。ニュースを聞いた時には、これから何がわかっていくのか、ドキドキしたものです。「自分たちの仕事にも使えるんじゃない?」って真顔で相談されたりもしましたし、Nature発表された論文は、会社のいろんな人がこぞって読んでいました。

 

ただ、現時点では、STAP細胞に関しては、そのコンセプトの正しさが判断できない状況にあります。実験科学的見地(論文に示されたデータから得られた解釈が科学的に正しいのか)の議論の大前提となる、「論文に示されたデータは実際に実験によって得られたものなのか、ごまかしや虚偽があるのではないか」という点について、はっきりしたことがわからないからです。現在、STAP細胞を発表した理化学研究所が、この点について調査を行っているところなので、その結果を待つしかない、というところです。

 

なんで、こんなことが起こってしまったのだろう、と不思議でたまりません。

 

STAP細胞に関しての具体的な記事は、全容がはっきりするまでは書けそうにありません。ただ、今日見かけた「はてな匿名ダイアリー」の文章(以下に、全文引用させていただきます)に出てきた「ツチノコの写真」の例えがちょっと面白かったので、とりあげてみます(特にSTAP細胞を意識してるわけではありません)。

 

STAP細胞を第三者が再現しても意味がない。その理由。

Oさんは「ツチノコは必ずいる」と固く信じていました。毎日、粘り強くツチノコを探し回りました。。

1月末、Oさんは、「ツチノコを発見した!」と発表しました。Oさんが撮影したツチノコの写真は人々に衝撃をあたえ、多くのメディアが大々的に報道しました。しかし、実は、このツチノコの写真は、ヘビの写真をフォトショップで処理したねつ造写真でした!
2月に入ると、写真の捏造を疑う声が世間に次第に広がりました。
3月、Oさんは、とうとう、捏造を認めて人々に謝りました。
4月、ご近所のPさんが本当にツチノコを発見しました。Pさんが撮影した写真は本物でした。

この場合、ツチノコの発見者はPさん。

 

この例え話でいう「ツチノコ」は「新しい科学上の概念」としていいでしょう。世の中の研究者は、「ツチノコの存在を証明したい、できれば本物を捕まえたいけど、少なくとも間接的に写真で存在を証明したい」と考えています。で、いろいろ手をつくしてツチノコを探すのですが、なかなかそう簡単には見つからません。

 

そんな中、「道端でツチノコみたいな動物を見かけ、急いでシャッターを切った。ぼやってしてて姿がよく判別できないけど、この写真に写っている動物はツチノコの可能性が高い」という状況が現れたらどうするべきでしょう?ぼやっとしたツチノコの写真」には、世の中でツチノコと信じられているような形は映っていますが、ピンぼけしてて、ツチノコと同定するに足りるもの、までは写っていません。

 

考えられる行動としてまず挙げられるのは、「そこにツチノコがいる」と信じて、本物のツチノコともう一度出会える(もしくは捉える)まで、徹底的にツチノコ探索活動を行う、という対応です。どんなに時間がかかっても、本物を見つけるまで妥協しない。本物(もしくは本物であることをきちんと示せるだけのクオリティを持った写真)を見つけたうえで、初めて世の中に公表します。本物を捕まえれば、権威あるメディア(研究の世界では権威ある学術雑誌)は、こぞって取り上げてくれるでしょう。

 

もう一つは、とりあえず「ツチノコみたいなものを見つけた」いう事実をまずは表明するというものです。そのような事実を先ず表明し、優先権を確保した上で、より詳細な調査と探索を行ないます。ある程度の情報を提供すれば、世の中も自分たちが調査している領域をどんどん探すことになり、競争相手も増えますが、ツチノコを見つけるという目的全体でみると、ツチノコの実在が示される確率はすごく高くなります(そうなると、優先権を確保した事が生きてくる)。

 

ただ、このアプローチは、第三者を説得するための材料が少ないため、その主張を世の中に発表するためのハードルは非常に高いです。これをクリアするには、メディアのハードルを下げる(権威ある雑誌ではなく、ランクを落とした雑誌から発表する)とか、ぼやっとした写真以外の状況証拠を揃えて権威あるメディアに取り上げてもらうとか、それなりの方法を取らないといけません。そのハードルの高さ次第では、「フォトショップを使って云々」という、黒い誘惑が心のなかから湧いてくることもあるでしょう。もちろん「ツチノコみたいなもの」と「ツチノコ」はイコールではないので、その差は明確に示されなくてはいけません。

 

どちらの方法が良い悪い、というつもりはありません。ただ、近年は、競争やら特許やら、スピードが色々と要求されるので、後者のほうが前に出てくることが多いのではないかと思います。そして、そのような状況では、「ツチノコを見つけた」のか「ツチノコ(みたいなの)を見つけた」のか「ツチノコ(みたいなのがいる場所)を見つけた」のか、受け手(研究であれば、その分野の個々の研究者)は、常に気をつけないといけないと思います。

 


このエントリーをはてなブックマークに追加

[ 2014/03/15 23:15 ] お薬作りの日記 | TB(-) | CM(-)
 

スポンサードリンク

この日記のはてなブックマーク数

このブログが生まれて
最近のコメント
プロフィール

薬作り職人

Author:薬作り職人
十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。

薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。

観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。


薬&提灯 詳しくは
病院でもらった薬の値段
http://kusuridukuri.cho-chin.com/

お薬の名前の由来
http://drugname.onmitsu.jp/

ミニ提灯データベース
http://kentapb.nobody.jp/
でどうぞ。


本ブログに関するご質問・ご意見などはこちらまで↓
ご使用の際は、@マークを半角に直してください。

kentapb@gmail.com

トラックバック


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。
Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...