人気科学ブロガーぱんつさんの以下の記事に刺激されて、この記事を書きました。
ぱんつさんのブログ「アレ待チろまねすく」
「卵子の染色体の特定の物質外れると流産に」というNHKの記事を僕が書くとしたら
NHKのニュースサイトに「卵子の染色体の特定の物質外れると流産に」という内容の記事が公開されました(ぱんつさんの記事にも、全文掲載されています)。「この記事と同じ内容の科学記事を、自分ならどう書くか」という視点はとても面白く、また、同じ趣向の記事をおぱんださんも書かれていたので、私も便乗させていただきました。
おぱんださんのブログ「券売機で購入できます」
「卵子の染色体の特定の物質外れると流産に」というNHKの記事を私が書くとしたら
なお、私の記事を作成するにあたり、論文著者が所属する国立成育医療研究センターの以下のプレスリリースを参考にしました。
正常な胎盤及び胚の発育に必須の卵子 X 染色体の活動を維持する仕組みを解明
それでは、私の書いた記事はこちらです。
メスの受精卵が正常に発育するには、2本あるX染色体のうち卵子由来のX染色体のみが働くことが必要です。国立成育医療研究センター研究所の福田篤研究員と阿久津英憲生殖医療研究部長のグループは、この仕組みをマウス受精卵を用いて世界で初めて明らかにし、科学雑誌ネイチャーコミュニケーションに発表しました。
これまでの研究から、イグジストという遺伝子がX染色体を働かなくすることが知られていました。福田研究員らは、染色体を構成するヒストンというタンパク質に注目し、卵子由来X染色体のヒストン上に、イグジストの機能を止めるための「目印」を発見しました。この目印は、ヒストンのリジンというアミノ酸に、メチル基という構造が結合してできています。この目印があると、卵子由来のX染色体のイグジストは機能せず、X染色体は機能できます。一方、精子由来のX染色体は目印を持たないので、イグジストが機能し、X染色体は働きません。
同様のメカニズムがヒトにも存在した場合、この仕組みの異常が、反復性流産などを引き起こす可能性も考えられます。今回の結果は、原因不明の不妊・不育症に対する新しい治療法の開発に繋がるかもしれません。(ここまで495字)
この記事を書くにあたって、NHKの記事の文字数(421字)にできるだけ近づけることを目標にしました。ちなみに、NHKのアナウンサーは、漢字仮名交じりで1分間に300~350語くらいの速度で原稿をよむそうなので(参考NHKアナウンサールームQ&A)、1分半くらいのニュース原稿という感じでしょうか。
記事を書いていて、特にきつかったのは、「できるだけ科学的背景を省略せず伝えること」と「NHKの記事の字数に出来るだけ合わせること」を両立させることでした。実際にやってみて、短い文章の中で、平易な文章・単語を使って科学的内容を説明するには、それなりの技術が必要なのだと痛感しました(これは、科学に限らず、専門知識が必要な分野全てに関して当てはまると思います)。また、ニュース原稿と想定すれば、字面で見るのと耳で聞くのとでは、内容理解のしやすさが全然違うでしょうから、そういう点も本来は気をつけて書かなくてはいけないのだと思います。
今回は元論文を読む時間がありませんでしたが、記事の作成スピード(この記事を書くのに小一時間かかりました)や内容の簡潔さを要求されることを考えると、元論文の正確な理解より、まずはプレスリリースの正確な理解が大事なのだと思います(プレスリリースの出来に左右されたりもするのですが)。で、その中でも、短い文章にする上で、どの内容を取り上げ、どの内容を省略するか、が問われるのでしょう。
参考;元論文
Nat Commun. 2014 Nov 14;5:5464. doi: 10.1038/ncomms6464.
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Author:薬作り職人
十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。
薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。
観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。
薬&提灯 詳しくは
病院でもらった薬の値段
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