薬作り職人のブログ

新薬のアイデアを考える人から見たいろんな話。

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いままでのアプローチで強敵は倒せるのかな。 はてなブックマーク - いままでのアプローチで強敵は倒せるのかな。

新薬のターゲットとして、現在、主に取り上げられているのは、タンパク質です。タンパク質は、酵素、受容体、イオンチャネルなど、細胞機能の主役となる分子、成長因子、サイトカイン、抗体、など、生体内情報を伝達する役割を果たす分子、様々な臓器の構造を作り出し維持すつ役割を果たす分子、などの種類に分けられます。

 

現在の薬作りの世界では、これらのタンパク質の異常(数の異常や、機能不良)が病気の原因となると考えられています。そのため、個別のタンパク質の働きを化合物(もしくは抗体などのタンパク質)でコントロールすることが、薬作りの目標とされてきました。確かに、20世紀までにある程度の治療方策が開発されてきた病気(高血圧、高血糖、胃潰瘍、高脂血症など、、)では、症状に関わる一種類のタンパク質を抑えると症状が改善されるという結果が得られ、新薬も生まれています。

 

しかし、「病気の発症・維持において、ひとつのタンパク質が大きく関与する」という考え方には、行き詰まり感も見えています。現在、治療薬が不足している病気、例えば、アルツハイマー病、慢性疼痛、糖尿病の合併症による腎障害・網膜症、などの病気については、単純に症状に関わるひとつのタンパク質を押さえるだけでは、十分な治療効果が得られないのではないか、という印象を受けます。これらの疾患において、一種類のタンパク質をターゲットとした薬剤の臨床試験がなかなかうまく行かない、新薬が生まれにくい、という事実があります。この事実を踏まえると、先に述べた印象は確かなように思えます。

 

ひとつのタンパク質に対して強い作用を持つ化合物をつくる技術は、現在、非常に進歩しています。細胞レベルでの作用に注目する限りは、このような化合物を得ることはそれほど難しくはありません。また、この化合物を動物の病態モデル(病気を模した処理をした動物)で効かせることも、多くの工夫と努力が必要ですが、最終的にはなんとかできます。

 

現在の大きな壁は、細胞や動物試験で得られた化合物を用いて、ヒト臨床試験で効果を証明すること。それは、たったひとつのタンパク質を動かすことで、ヒトの複雑な病気がコントロールできる、という仮説を証明することです。現在の、臨床試験がうまくいかない(とくに治療法が少ない病気において)状況は、「このような仮説が簡単に証明できる病気に対しては、おそらくもう薬ができてしまっているのではないか。今残っている難病については、このような戦法は通用しないのではないか」という思いを強くさせます。

 

この問いに答えるために、ひとつの化合物でひとつのタンパク質がだめなのであれば、ひとつの化合物で多くのタンパク質をコントロールする、という考え方が前面に出てきても良いかもしれません。複数のタンパク質の機能調節が可能であるマスター・コントローラー(例えば、遺伝子発現調節因子)のようなものを、化学的な方法で作り出すことができないか、なんてアプローチも考えられます。

 

要は、これまでの薬作りの方法論を質的に変えていく事が必要です。「雑魚を片つけたあとの強敵に、雑魚と同じ方向論で立ち向い、あっという間に跳ね返される」という状況は、早く改善しなければいけないと思います。勝利するまでは雑魚も強敵ですが、一度打ち負かしたあとも、そこを基準にし続けるのは問題があるんだとおもいます。

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[ 2012/09/08 20:11 ] お薬作りの日記 | TB(-) | CM(-)
 

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薬作り職人

Author:薬作り職人
十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。

薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。

観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。


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