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ファレカルシトリオールー1000万分の3gで効果を示す薬 はてなブックマーク - ファレカルシトリオールー1000万分の3gで効果を示す薬

ちょっと前のことですが、「飲み薬の中で一日の服用量が一番少なくてすむ薬は何だろ?」という疑問が突然わきました。ネット上でこの質問をしてみたところ、業界の方から「ファレカルシトリオールでは?」という答えをいただきました。


というわけで、ファレカルシトリオールについてちょっぴり調べてみました。ファレカルシトリオール(商品名 ホーネル(大正製薬)、フルスタン(キッセイ薬品工業))は、ビタミンDと同じ作用を持つ化合物で、血液中のカルシウム量を高める効果があります。ビタミンDの働きが何らかの形で弱まると、血液中のカルシウム量が減り骨の強さが弱まります。ファレカルシトリオールは、ビタミンD の働きを補充する役割を果たします。

 

ホーネルの添付文書に記載されている服用量は以下のとおりです。

 

通常、成人には1日1回ファレカルシトリオールとして0.3μgを経口投与する。ただし、年齢、症状により適宜減量する。


1μgとは100万分の1gのこと。0.3μgということは、1000万分の3gの服用で効果が得られることになります。


普通、薬の服用量の単位としてよく見かけるのは"mg"です。例えば、解熱鎮痛薬のロキソプロフェンナトリウム(第一三共、商品名 ロキソニン)は1回の服用量が60mg、コレステロール低下薬のアトルバスタチン(ファイザー/アステラス、商品名 リピトール)は1日の服用量が10mg。1mgは1000分の1gなので、ロキソニンやリピトールの1000分の1以下の量でファレカルシトリオールは効果を示すことになります。


ファレカルシトリオールがこれほど少量で作用する理由には、幾つかの要因があります。


ひとつは、ファレカルシトリオールが細胞内で分解されにくいこと。ファレカルシトリオールは、ビタミンDの作用を維持したまま、ビタミンD(正確には活性型ビタミンD3)の構造を変化させた化合物です。天然に存在する活性型ビタミンD3は、細胞内で代謝をうけるため、ビタミンDとしての活性はすぐに低下してしまいます。これに対し、ファレカルシトリオールは、細胞内で代謝を受けにくいよう構造を変化させています。そのため、細胞内でのビタミンDの作用がずっと維持されるので、少ない量で効果を示すことができます。


2012 06 21 2248
活性化ビタミンD3の構造式(wikipediaから)

2012 06 21 2247
ファレカルシトリオールの構造式(wikipediaから)

 

もう一つは、ファレカルシトリオールが代謝を受けてできた化合物にもビタミンDとしての作用が残っていることです。活性型ビタミンD3は代謝されると作用がなくなりますが、ファレカルシトリオールは作用がなくなりません。ただでさえ代謝されにくいのに、代謝されてからも作用が残っているのですから、ますます少ない量で作用を示すことができます。


薬作りの世界では微量の化合物を扱う機会は多いですが、0.3μgというのは非常に小さい重量です。化合物の種類にもよりますが、1mgで耳かきの先の半分くらいの量というイメージでしょうか。そのため、実際の錠剤では、かさを増すための賦形剤を加えることで飲みやすくしています(もっとも、普通の飲み薬でもそうなのですが)。


ホーネルの添付文書によれば、0.3μg錠の錠剤の重量は約140mg(mgは1000分の1g)。ということは、錠剤の重量中で主成分のファレカルシトリオールが占める割合は、0.0002%となります(計算間違ってないよね。。)。これだけ微量な割合の化合物を含む錠剤を、均一な品質で作れる製剤技術っていうのはすごいものだなぁ、と思います。

 


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[ 2012/06/21 23:01 ] お薬作りの日記 | TB(-) | CM(-)
 

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薬作り職人

Author:薬作り職人
十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。

薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。

観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。


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