薬作り職人のブログ

新薬のアイデアを考える人から見たいろんな話。

スポンサーサイト はてなブックマーク - スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

このエントリーをはてなブックマークに追加

[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

線維筋痛症治療薬「リリカ」承認。 はてなブックマーク - 線維筋痛症治療薬「リリカ」承認。

先日(6/1)、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会は、ファイザー社の「リリカ」について、「線維筋痛症に伴う疼痛」の効能・効果を追加することを承認しました。これまで「線維筋痛症」を適応とする薬剤は日本にはありませんでした。アメリカでは、リリカは線維筋痛症治療薬として用いられており、日本での早期の承認が期待されていました。

 

線維筋痛症に初の薬 - 社会ニュース : nikkansports.com

 

痛みを症状とする病気には様々なものがあります。その中でも、線維筋痛症は患者さんの苦痛が激しく、治療法が乏しい事で知られています。日本では200万人の線維筋痛症患者がいるとも言われています。

 

線維筋痛症の患者さんが作る「線維筋痛症友の会」というサイトがあります。このサイトには、この病気についての様々な情報が掲載されています。その中から痛みに関する記述を引用してみます。

  

全身や広範囲が痛み、またある部分だけが痛むことがあります。 その痛みは軽度のものから激痛まであり、耐え難い痛みであることが多いです。痛みの部位が移動したり、天候によって痛みの強さが変わったりすることもあります。痛みが強いと日常生活に支障をきたすことが多く、重症化すると、軽微の刺激(爪や髪への刺激、温度・湿度の変化、音など)で激痛がはしり、自力での生活は困難になります。

 

線維筋痛症の困ったところは、痛みの原因がわからないということです。普通、痛みというのは体のどこかの部位が炎症を起こしたり傷ついたりすることで、痛みを伝える神経が活性化されて起こります。ところが、線維筋痛症では、炎症や体の傷害が痛みを起こすわけではありません。

 

線維筋痛症の場合、炎症が起こりやすい関節などが痛むことが多いのですが、血液検査や画像診断などでは異常を検出することができません。そのため、関節痛などに効果を示す抗炎症薬はあまり鎮痛効果を示しません。炎症が起こっていない痛みに抗炎症薬を投与しても効果がないのは当然のことです。

 

どのようなメカニズムで神経が活性化されるかがわかっていれば治療薬の開発もやりやすいのですが、線維筋痛症に関しては、原因がわからないため非常に薬が作りにくくなっています。

 

「痛みの元」がわからない線維筋痛症の治療薬を開発する際には、「痛みの原因部位から脳に至る経路のどこかで神経伝達をブロックする」というアプローチを取ることになります。例えば、痛み伝達を直接止める、痛みを感じる脳の働きを止める、などの方法です。しかし、これらの作用を持つ薬物は、循環器系や中枢系の副作用を示すことが多く、これはこれで安全な薬剤を見つけ出すことは難しい作業です。

 

現在、線維筋痛症の治療には、抗うつ薬が用いられています。しかし、現在、抗うつ薬には線維筋痛症についての効能は認められていません(これを適応外処方といいます)。抗うつ薬は、「下降系抑制系(痛み神経の働きを低下させる仕組み)」を活性化させることで鎮痛作用を持つとされていますが、この作用メカニズムと線維筋痛症との関連はまだよくわかっていません。

 

一方、リリカは神経ー神経間の信号伝達である「シナプス伝達」を直接弱める作用があります。リリカの作用メカニズムと線維筋痛症との関連性も、抗うつ薬同様よくわかっていません。しかし、リリカに関しては、臨床試験によって有効性が確認されたため、線維筋痛症への効能を取得することができました。リリカは、これまで末梢性神経障害痛(末梢神経が傷つくことによって起こる痛み)に対して承認を得てきましたが、今回、線維筋痛症についても承認されたというわけです。

 

線維筋痛症は血液検査や画像診断などの客観的な指標では診断できないことから、不慣れな医師にとっては線維筋痛症を見つけ出すこと自体が難しいという状況です。そのため、本来は線維筋痛症と診断されるべきなのに、そのような診断を受けていない患者さんも多いとされています。治療薬としてのリリカが承認されても、正確な診断を受けられなければ、患者さんは薬剤の福音を受けられません。今後は、このような「薬剤が患者さんのもとに届かない問題」の解決も、大きな課題となると思われます。

 

(本ブログで、ファイザー社の薬剤紹介が続いていますが、特に意図はありません)

関連記事

このエントリーをはてなブックマークに追加

[ 2012/06/06 20:21 ] お薬作りの日記 | TB(-) | CM(-)
 

スポンサードリンク

この日記のはてなブックマーク数

このブログが生まれて
最近のコメント
プロフィール

薬作り職人

Author:薬作り職人
十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。

薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。

観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。


薬&提灯 詳しくは
病院でもらった薬の値段
http://kusuridukuri.cho-chin.com/

お薬の名前の由来
http://drugname.onmitsu.jp/

ミニ提灯データベース
http://kentapb.nobody.jp/
でどうぞ。


本ブログに関するご質問・ご意見などはこちらまで↓
ご使用の際は、@マークを半角に直してください。

kentapb@gmail.com

トラックバック


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。
Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...