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食欲を亢進させる薬ーグレリン はてなブックマーク - 食欲を亢進させる薬ーグレリン

食欲を低下させる薬というのは時々話題に登りますが、食欲を更新させる薬というのはあまり話題に登りません。ちょっと食欲がない程度であれば、食事のメニューを工夫するか、市販の胃腸薬(苦味健胃剤など)を服用する程度で十分です。

 

しかし、これらの工夫では食欲が回復しない状態もあります。例えば、精神的な原因によるものとして「神経性食思不振症(いわゆる拒食症)」が挙げられます。また、胃炎や胃潰瘍が起こっていないのに胃もたれや吐き気があって食事ができない「機能性胃腸症」という状態もあります。ガンの末期には、がん細胞によって栄養障害が引き起こされ、体重が異常に減少する「カヘキシー」と呼ばれる状態が起こります。これらの状態では、何らかの手当をして食欲を回復させないと、体内に十分な栄養が行き渡らず、全身状態が悪くなってしまいます。

 

食欲をコントロールする機構についての研究は古くから行われています。しかし、その研究の殆どは、食欲を抑制させ「病的な体重増加」を抑制するための「抗肥満薬」の開発に結びつけようとするものでした。様々な食欲抑制剤が開発され、幾つかは市場にも登場しました。しかし、これらの薬には中枢性の副作用(自殺企図)を引き起こすものもあり、安全な薬として世の中に定着するというところまではいたっていません。

 

抗肥満薬はダイエットに使うものではありません。薬作り職人のブログ

中枢性の抗肥満薬開発についての記事。

 

 

食欲抑制剤の開発が集中して行われている一方、食欲亢進剤についての研究はあまり世の中に出ることはありませんでした。

 

そんな中、日本で食欲亢進剤の開発を目指していたプロジェクトがあります。ヒトで食欲を増進させる「グレリン」というホルモンをターゲットにした創薬活動です。

 

「グレリン」は国立循環器病センターの寒川賢治らによって1999年に発見されました。このグレリンを動物に投与すると、食欲が亢進し摂食量(餌を食べる量)が増えます。また、消化管の蠕動運動が促進する作用を持つことも食欲亢進作用につながると考えられています。そして、「グレリンを人に投与すれば、神経性食思不振症などの治療薬として使えるのではないか」というアイデアを元にした臨床試験が、この数年間行われてきました。

 

グレリン医療応用プロジェクト(活動は終了)


 

しかし、先日の報道によると、グレリンの臨床試験は残念な結果に終わりました。

 

医薬経済社:第一三共 第3相の拒食症薬、「グレリン」が開発中止

 第一三共が第3相試験を進めていた拒食症薬「SUN11031」(一般名=ヒトグレリン)の開発を中止していたことがわかった。「神経性食欲不振症」の適応で試験を進めていたが、「初期目標を達成できなかった」

 

グレリンがヒトで効果を示さなかった原因については明らかにされていません。ただ、グレリン自体ではなく、化学合成によってグレリンと同じような作用を持つより強力な化合物を作り出すことで、食欲亢進剤として十分な効果を示す薬剤ができる可能性は残っています。

 

とはいっても、そのような化合物の開発に製薬会社が手を出せるかどうかは微妙なところです。グレリン自体を使った研究には、化合物を探しだすプロセスが入っていないので、時間やコストは掛かりません。これが、一から薬を作るとなると膨大なコストが必要となります。

 

食欲亢進薬について、今後どのような動きがあるのかはわかりません。「ニーズはあるはずなのだけど、それほど多くはない」というのが、創薬活動を足踏みさせる原因の一つであるのは確かです。このためらいを動かすためには、やはり、国などからの何らかの後押しが必要なのだと思います。

 

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[ 2012/05/15 23:46 ] 薬の話 | TB(-) | CM(-)
 

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Author:薬作り職人
十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。

薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。

観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。


薬&提灯 詳しくは
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