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関節リウマチ治療に新しい風ーFDA査問委員会によるTofacitinib承認勧告 はてなブックマーク - 関節リウマチ治療に新しい風ーFDA査問委員会によるTofacitinib承認勧告

関節リウマチ治療に新しい風が吹こうとしています。

 

2012年5月9日、アメリカの製薬会社ファイザー社は、JAK阻害薬「Tofacitinib」がFDA(アメリカ食品医薬品局)の査問委員会から「成人における中等度から重度関節リウマチ」に対して承認勧告を受けたと発表しました。Tofacitinibを始めとするJAK阻害薬は、その治療効果の強さと飲み薬であるという便利さから、関節リウマチの新薬として非常に大きな期待を持たれていました。

 

TofacitinibTofacitinibの構造式


Press Releases | Pfizer: the world's largest research-based pharmaceutical company
Tofacitinib ...
ファイザー社からのプレスリリース(英語)





関節リウマチは、免疫機構の異常により手や足の関節に重い関節炎が生じる病気です。関節リウマチでは、関節炎による激しい関節痛と、関節をつくる軟骨や骨の破壊による関節の機能低下が起こります。これらの症状は、患者さんの生活の質(QOL:Quality of Life)を大きく低下させます。

 

関節リウマチの患者さんの関節では、TNFαやIL-6などのサイトカイン(免疫細胞に働きかけ、免疫細胞の働きを活性化させるタンパク質)が大量に産生されます。サイトカインは、免疫細胞を活発化させて関節炎を悪化させたり、軟骨を壊すタンパク質を増やしたり、骨を壊す細胞を活性化させたりします。

 

関節リウマチの治療には、このサイトカインの働きを弱める必要が有ることは、昔から知られていました。 JAK(Janus Kinase)は、細胞の中に存在する酵素です。サイトカインが細胞表面のサイトカイン受容体に結合すると、細胞内のJAKが活性化します。活性化したJAKはStatというタンパク質を活性化させます。このStatが、様々な遺伝子の働きを活性化させることで、関節リウマチの症状の悪化が起こります。

 

多くの種類のサイトカインが、JAKの活性化を介して生理作用を示します。そのため、JAKの働きを止める薬剤は、多くの種類のサイトカインの働きを同時に止めることができ、強い治療効果を示すと考えられます。 実際、「Tofacitinib」の関節リウマチに対する臨床試験においては、非常に良い治療効果を示すことが示され、大きな話題を呼びました。

 

JAK阻害薬tofacitinibの第3相試験の結果が発表、プラセボとの比較で著効:日経メディカル オンライン







関節リウマチの治療には、現在メトトレキサート(MTX)抗体医薬(生物製剤)と呼ばれる薬が主に用いられてきました。


メトトレキサートは、免疫細胞の増殖を抑えつことでサイトカイン量を減らす働きを持ちます。また、抗体医薬はサイトカインに特異的に結合する抗体タンパク質を用いサイトカインが免疫細胞に働きかけられなくすることで、サイトカインの働きを弱めます。代表的なものとしては、TNFαに対する抗体(レミケード、ヒュミラなど)、IL−6受容体に対する抗体(アクテムラ)が挙げられます。

 

これらの薬剤により、難病と言われた関節リウマチの治療は劇的に進歩しました。しかし、これらの薬剤にも欠点は存在します。

 

MTXについては、効果を示さない人が存在すること、間質性肺炎、肝障害、骨髄抑制(血液を作り出す骨髄の働きが低下すること)などの重い副作用が起こりうることが問題視されています。

 

抗体医薬は、遺伝子組み換え技術によって作られるタンパク質であることから注射での投与が必要となります(最近は、自己注射が可能な薬剤もあります)。また、細胞培養を用いて作られる(そのため生物製剤と呼ばれます)ことから製造コストが大きく、薬の値段が非常に高くなってしまいます。

 

Tofacitinibには、MTXで認められる重篤な副作用は認められません。リンパ腫や感染症のリスクが指摘されましたが、FDA諮問委員会では、治療効果によるベネフィット(利益)のほうが高いと判断されたようです。また、化学合成によって作られる飲み薬であることから、注射の不便さもありません。(ただし、コストについては、どのような値段がつくのか現段階では不明です)。

 

Tofacitinibは、これまでの薬剤の欠点を克服しかつ効果は高いという、新薬の見本のような化合物です。こういう薬を作ってみたいなぁ、とつくづく思います。 今回の承認勧告により、Tofacitinibが関節リウマチ治療薬として承認・発売されることは、ほぼ間違いないものとなりました。承認された折には、関節リウマチ治療の歴史に大きな一歩が記されることになるのだろうと思います。

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[ 2012/05/11 22:39 ] 薬の話 | TB(-) | CM(-)
 

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十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。

薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。

観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。


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