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サラジェンの唾液を出す能力は半端ない。 はてなブックマーク - サラジェンの唾液を出す能力は半端ない。

先日、唾液を出す薬「サラジェン」についての記事を書きました。

 

サラジェンの名前の由来ー唾液を出すための薬ー薬作り職人のブログ

 

 

 

サラジェンは、唾液腺上のムスカリン受容体を刺激し、放射線(頭部ガンの治療)や免疫機構の異常(シェーグレン症候群)によって障害を受けた唾液腺から唾液を出させる作用を持ちます。

 

さて、この記事にこういう反応がありました(@cicada_colonさん)。

 

2012 05 10 0011

 

確かに、唾液腺の細胞がダメになってしまったら、いくらスイッチを入れても(ムスカリン受容体を刺激しても)、その細胞からは唾液はでません。ということは、サラジェンが効果を出すためには、障害を受けていない唾液腺の細胞が、障害を受けた細胞以上に唾液を出さなくてはいけないということになります。

 

はたして、障害を受けていない細胞は、サラジェンによってどれだけ唾液を出せるようになれるのか。それは、障害を受けた細胞のダメージ分を取り返すのに十分なものなのか?

 

というわけで、サラジェンの薬理作用について紹介されている総説から、サラジェンのラット唾液分泌に対するデータを探してみました。サラジェンを正常ラットに投与し、顎下腺と耳下腺からでた唾液の合計量を測定した結果が報告されています。総説にはグラフが掲載されていた(図5)ので、そこから数値を読み取ってみました。

 

日本薬理学雑誌 Vol. 127 (2006) No. 5 P 399-407

丸山 和容、口腔乾燥症状改善薬塩酸ピロカルピン(サラジェン®錠5 mg)の薬理学的特徴および臨床試験成績
 

DigitalCurveTracer

DigitalCurveTracer ...

画像ファイル上の折れ線グラフや棒グラフから、数値を読み取ることができます。

その結果を以下に示します

サラジェン投与量(mg/kg,十二指腸内投与)、唾液量(μg/1g組織重量)の順です

0(対照群)   3.3

0.1              5.3

0.2                   62

0.4                   219

0.8                   620

 

サラジェンの用量が高くなると、サラジェン非投与群(通常のラット)に比べ10倍以上の唾液分泌が起こることがわかります。つまり、90%の唾液腺細胞がダメージを受けていても、残っている唾液腺細胞には通常の10倍以上の唾液を出す能力があるので、その分を取り返すことができるというわけです。

 

唾液の分泌は、通常、神経から分泌されるアセチルコリンにより調節されています。このアセチルコリンは分泌されると、アセチルコリン分解酵素によりすぐ分解されます。これは、ムスカリン受容体のスイッチが入りっぱなしにならないようにするためです。サラジェンは、この分解作用を受けないので、唾液分泌のためのスイッチが常に入りっぱなしになり、正常状態に比べて唾液がどんどん出てくるということになるのだと思われます。

 

実は、私もムスカリン刺激による唾液分泌の試験を経験したことがあります(その時は、唾液が出なくなる副作用の試験でした)。ラットにムスカリン受容体刺激薬を投与すると、口からだらだら唾液が出てきます。正常の状態では、ムスカリン受容体のスイッチを切らないと大変なことになるんだな、ということが実感できます。

 

というわけで、動物レベルでは、サラジェンの唾液を出す能力は半端ない事がわかりました。ダメージを受けていない唾液腺細胞がある程度存在していれば、サラジェンの効果は十分現れると考えられます。ヒトへの使用については、副作用との兼ね合いも考えながら、丁度具合が良いように投与量をコントロールしたのだと思われます。 

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[ 2012/05/10 11:00 ] 薬の話 | TB(-) | CM(-)
 

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Author:薬作り職人
十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。

薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。

観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。


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