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"味を感じる器官が、少なくとも15種類の甘さの違いを識別できる機能を持つことが分かった"のソースの論文を読んでみた。 はてなブックマーク -

先日、「舌にある味を感じる器官が、少なくとも15種類の甘さの違いを識別できる機能を持つことが分かった」というニュースを取り上げました。

「何を言いたいのかよくわからない科学記事とは」

この記事では、ニュースのソースとなる論文がわかんなかったので、想像で色々書いてみました。その後、「蝉コロン」さんがこの話題を取り上げ、「ソースではないか」と思われる論文を紹介されていました。せっかくなので、この論文を読んで見ました(私も甘味の専門家ではないので、もしかしたら誤認があるかもしれません)。

蝉コロン
"少なくとも15種類の甘さの違いを識別できる機能を持つことが分かった"について

蝉コロンさんがこの論文を見つけた経緯は以下のとおり(引用

元記事に情報がなさ過ぎて泣けるんですけど、著者名の"Ishiguro"と、薬作り職人さんが指摘してるレセプターである"GPCR"をgoogleさんにここ一週間の設定で教えてもらいました。



(ここから論文の紹介)
Characterization of the Modes of Binding between Human Sweet Taste Receptor and Low-Molecular-Weight Sweet Compounds
oS ONE April 2012 | Volume 7 | Issue 4 | e35380

世の中には沢山の甘味物質があります。これらの甘味を認識するのは舌にある味蕾(みらい)という部分です。味蕾には甘味受容体と呼ばれるタンパク質が存在しています。甘味受容体に甘味物質が結合することで、味蕾の細胞の中に「甘味物質が結合した」というシグナルが伝わり、甘味を伝える神経が活性化されます。

この甘味受容体の正体は、hT1R2–hT1R3と呼ばれる受容体タンパク質です。hT1R2–hT1R3は、hT1R2とhT1R3という2つのタンパク質が組み合わさって出来ています。hT1R2とhT1R3は、細胞の表面に存在していて、細胞の外側に大きな「甘味物質結合部位」を露出させています。甘味物質がこの甘味物質結合部位に結合することで、「hT1R2–hT1R3に甘味物質が結合した」というシグナルが発せられます(正確に言うと、甘味物質が結合したhT1R2–hT1R3がGタンパク質という別のタンパク質を介して細胞内のシグナル経路を活性化されます)。

基本的に、このような受容体タンパク質に結合できる有機化合物は極めて限られたものです。これは、薬を作るのが難しい原因の一つでもあります。薬の多くは受容体タンパク質をターゲットとしていて、特定の受容体タンパク質にうまく結合させることがなかなかできないのです。

ところが、この甘味受容体には様々な構造を持つ甘味物質が結合します。そこで「甘味物質結合部位」がどのようにして多様な甘味物質を認識することができるのか、という疑問が出てきます。

今回の論文は、この疑問に対して、遺伝子組み換え技術を用いてアプローチしました。

著者らは、甘味物質結合部位を構成するアミノ酸配列(甘味物質結合部位はアミノ酸が一列に繋がったてできています)の中で、甘味物質の結合に関与すると考えられている15個のアミノ酸を選びだしました。そして、遺伝子組換え技術により特定のアミノ酸を別のアミノ酸に入れ替えた15種類の変異甘味受容体を作り、培養細胞の表面に発現させました。そして、これら15種類の変異甘味受容体に甘味物質を作用させ、細胞にシグナルが伝わるかどうかを調べました。もし、特定のアミノ酸を変化させることで甘味物質が作用しなくなったとすると、変化させたアミノ酸が甘味物質の結合(厳密には甘味受容体の活性化)に関わっていることになります。

この実験では6種類の甘味物質を用いました。その結果、甘味物質ごとに結合に関与するアミノ酸の種類が異なることがわかりました。そして、これらの結果を元にしたコンピューターシミュレーションにより、甘味物質の結合部位に対する甘味物質の結合の仕方を可視化することができるようになりました。これらの成果は、新しい甘味物質や甘みを抑える物質の分子設計などに役立つと考えられます。

(論文の解説終わり)

というわけで、「15種類の甘さの違いを識別できる機能」というのは、論文に書かれている内容とは異なっていることがわかりました。また、「甘さの種類を識別出来る機能」というのは、正確には「異なる甘味物質を認識するメカニズム」ということもわかりました(すくなくともこの論文中では、「甘い」という感覚としては共通のものと考えてるようです)。

一行見出しをつけるとすれば、「異なる甘味物質が、同じ甘味受容体に結合できるメカニズムを解明」くらいが正確なところだと思います。

追記(4/23)
東京大学と新潟薬科大学の連名でプレスリリースが掲載されていますね。記事を書き上げてから気が付きました。。できることなら、報道発表と同時にプレスリリースのWeb掲載をしていただきたいと思います。

ヒト甘味受容体における人工甘味料の認識機構の解明(pdfファイル)
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[ 2012/04/23 22:35 ] ひとりごと | TB(-) | CM(-)
 

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Author:薬作り職人
十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。

薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。

観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。


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