薬作り職人のブログ

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何を言いたいのかよくわからない科学記事とは。 はてなブックマーク - 何を言いたいのかよくわからない科学記事とは。

報道機関のWebサイト上には、大学や研究機関からの研究発表を伝えるニュースが良く載っています。医学とか生物学に関するニュースは、職業柄よく目を通します。

このような記事の文章を読んでいると、その内容をきちんと理解できないことがよくあります。記事を読んでみても、「この人たちが発見したことって一体何なのか」が掴み取れないのです。

その原因は、書かれている情報が不十分なことにあります。おそらく「発表した側はきちんと伝えているのだけれど、それが記事にうまく反映されていない」ということなのだと思われます。基本的に、大学や研究機関からの研究発表は「論文もしくは学会で発表できる」レベルのものです。「よくわかんない記事」では、そういうレベルの発表であれば当然書かれていて然るべきことが、記事の中に書かれていないのです。

もちろん、情報のソース(研究機関の公式発表や投稿論文)がリンクされていれば、そこを見ることで研究者が何を言いたいのかの確認はできます。ただ、そういう手当てがされていることはあまりありません。研究機関のサイトにすら、公式のプレスリリースがでてないこともあります(4/21現在、以下の記事に関しては、そういう状態でした)。

例えば、今日見かけたこんな記事では、結局何がわかったのかよくわかりませんでした。

甘さ識別 舌の器官の機能解明(NHK News Webから)

ヒトの舌にある味を感じる器官が、少なくとも15種類の甘さの違いを識別できる機能を持つことが分かったなどとする研究結果を、新潟薬科大学などの共同研究チームが発表し、将来的には糖尿病の治療薬の開発などへの応用が期待されるとしています。

(中略)

研究チームは、「味らい」を構成するタンパク質で、甘味を感じる「甘味受容体」と呼ばれる部分を詳しく分析した結果、少なくとも15種類の甘さの違いを識別できる機能を持つことが分かったと発表しました。



この記事を読むと、少なくとも下記の2つの意味に読み取れます。

A. 1種類の甘味受容体タンパク質が少なくとも15種類の甘さの違いを識別できる。
B. 複数の種類の甘味受容体タンパク質が存在することで、少なくとも15種類の甘さの違いを識別できる。

この研究が取り上げている甘味受容体タンパク質が1種類なのか複数なのかが読み取れないので、これら2つの解釈が成り立つというわけです。

上記引用部の続きにある、

この「甘味受容体」は、消化器などにも存在して、血糖値を感知する役割にも関わっていることが分かっているということです。



という文からは、おそらく1種類のタンパク質なのではないか、と想像されます。具体的に甘味受容体タンパク質の名前を書いてくれてたら、スッキリ頭に入るのですけれど(そこが秘密にされてたらどうしようもないですが)。

ちなみに、どういう発表なのかを頭の中で妄想してみるとこんな感じ。

Aの解釈だと、甘味物質による(ある)甘味受容体の反応が、甘味物質ごとに異なる事がわかった、と想像できます。甘味受容体は、GPCR(Gタンパク質共役受容体)と呼ばれるタイプのタンパク質であることが知られています(ただ、今回のタンパク質がそうであるかは、この記事からはわかりません)。GPCRである甘味受容体の場合、甘味物質が甘味受容体に結合すると細胞内にシグナルが発生します。甘さの違いを識別できるというのは、「甘味物質によってこれらのシグナルの大きさが異なる」とか「甘味物質によって伝わるシグナルの種類が異なる」とかいう事を表しています。今回の発見では、そのメカニズムを解き明かすための「何か」が見つかったんじゃないかと思われます。一番知りたいところが「何か」というのも、勘弁してほしいものですが。

Bの場合は、甘味物質ごとに異なる甘味受容体が存在することで、甘さの違いを識別するということがわかった、ということでしょうか。においや苦味に関しては、すでにこのような減少が起こることが知られています。ちなみに、においに関する仕組み(嗅覚受容体)の発見に関しては、リンダ・B・バックとリチャード・アクセルの2人にノーベル生理学・医学賞が与えられています(2004年)。この考え方で行くと、15種類の違いを認識するためには多くの甘味受容体の種類が必要で、これらの複数受容体が発見(もしくはこれまで知られているタンパク質から見つかった)となれば、これもまた興味深いことだと思います。ただ、今回はこの可能性は低そうですが。

まぁ、あたってるかどうかはわかりませんが、ここに書かれていることの少なくとも一部は、研究者の発表資料なりなんなりに書かれていてもおかしくはないかな、と思います。もし全く違うとしたら、それこそ大発見?かもしれません。

報道機関の記事というのは、短くかつ正確に物事を伝えないといけません。専門知識があまりない記者さんが、短い文章のなかで「研究結果のどこが一番大事なのか」を伝えることは、とても難しいことなのだと思います。この点については、報道機関だけでなく、研究者側も何らかの工夫をしなきゃいけないんじゃないかな、と思います。

追記(4/22)
「蝉コロン」さんに、今回の記事を取り上げて頂きました。この発表のソースと思われる論文について記載されてます。

蝉コロン
"少なくとも15種類の甘さの違いを識別できる機能を持つことが分かった"について
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[ 2012/04/21 21:45 ] ひとりごと | TB(-) | CM(-)
 

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Author:薬作り職人
十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。

薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。

観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。


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