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脳とサイトカイン~うつ病へのアプローチ はてなブックマーク - 脳とサイトカイン~うつ病へのアプローチ

こういう記事を見かけました。うつ病に対する「仮説」について取り上げられています。

うつ病は免疫システムの副産物か?(5号館のつぶやき)

Hypothesis Molecular Psychiatry advance online publication 31 January 2012;doi: 10.1038/mp.2012.2
The evolutionary significance of depression in Pathogen Host Defense (PATHOS-D)
C L Raison and A H Miller


 オープンアクセス論文なので、どなたでも全文を読めます。とは言ってもやはり専門的論文なので、いろいろとややこしいことが書いてありますが、要するに炎症や免疫反応が起こる時に免疫細胞などから出される細胞間のコミュニケーションに使われる分子(TNF:腫瘍壊死因子、インターロイキン、インターフェロン、ケモカインなど)が局所的な免疫反応の場で使われるだけではなく、血液やリンパ液に乗って全身に行き渡る結果、脳にも達してそこで様々なうつ病症状を引き起こしているらしいという「仮説」です。



あくまで「仮説」としての紹介ですが、免疫細胞の活性化に関与するサイトカイン(引用中ではTNFやインターロイキン、インターフェロン、ケモカイン)などが脳に直接作用することが、うつ症状を引き起こす原因ではないか、ということのようです。

紹介されているサイトカインの中で、実際にうつ状態をひきおこすものとしては、インターフェロンが知られています。インターフェロン製剤では、現在医療現場でC型肝炎の治療に用いられています。このインターフェロンの副作用として、抑うつ症状や不眠、不安などの神経症状(添付文書によると、発生頻度 0.1~5%)が起こることが知られています。インターフェロン製剤を使わなくても、体内でインターフェロンが増えるような状況があれば同じことが起こりそうな気はします。

サイトカインが生体内で大量に産生される状況としては、例えば関節リウマチのように、激しい炎症によって免疫系が極度に活性化させれる状態があげられます。関節リウマチでは関節の炎症による激しい痛みが続きます。そして、関節の痛みが非常に長く続くと、うつ状態におちいる患者さんもでてくることが知られています。これまでは、痛みによる不快感・痛みが取れない絶望感、のようなものがうつ状態を引き起こすのではないか、といわれてきました。もしかすると、関節リウマチの時に慢性的に増加しているサイトカインが、患者さんの脳に直接何らかの影響を与えているのかもしれません。

うつ病というのは、発症原因がよくわかっていません。治療には、脳内の神経伝達物質量のコントロールを目的とした薬(抗うつ薬)が用いられています。この方法は、「うつ病の原因を取り除く」と言うよりは、「何らかの原因でおこった神経伝達物質の乱れをなおす」というイメージです。つまり、現在の抗うつ薬治療といういわゆる対症療法のようなものなのです。

もちろん、治療法がないという状況に比べれば、はるかに恵まれた状況ではあります。ただ、対症療法のような付け焼刃的なやり方ではない、もっと根本に迫る治療法というのがないのだろうか?と思うことは多いです。

今回のサイトカインの話は、原因療法へのヒントになるのかもしれないな、と思います。現在、サイトカインの働きを低下させる薬剤は、関節リウマチや自己免疫性疾患の治療薬として、多くの製薬会社で研究開発が行われています。それらの薬剤の使い道のひとつとして、こういうアプローチの仕方もおもしろいのではないでしょうか。
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[ 2012/03/03 19:56 ] 薬の話 | TB(-) | CM(-)
 

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Author:薬作り職人
十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。

薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。

観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。


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