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抗肥満薬はダイエットに使うものではありません。 はてなブックマーク - 抗肥満薬はダイエットに使うものではありません。

アメリカで新しい抗肥満薬が承認されるとのニュースが報道されました。

抗肥満薬、米で承認へ 臨床試験で年10%減量効果
米国で4月にも、抗肥満薬「キューネクサ」が承認される見通しになった。米食品医薬品局(FDA)の諮問委員会が22日、承認を求める勧告を賛成多数で可決した。

 キューネクサは、日本でも承認されている食欲抑制薬と抗てんかん薬を混ぜ合わせたカプセル剤。申請をしていた製薬会社によると、肥満の人を対象にした臨床試験では1年間で平均10%の減量効果が認められた。



この「キューネクサ(Qnexa)」という薬は、VIVUS社というアメリカの製薬会社が開発したもの。食欲抑制作用があるフェンテルミンとトピラマートという2つの薬を配合した薬です。体重減少、2型糖尿病、閉塞型睡眠時無呼吸症候群(肥満によって呼吸が妨げられる)への使用について承認が得られたそうです。

プレスリリース(英語)
FDA Advisory Committee Recommends Approval of Qnexa®


この薬に含まれるフェンテルミンとトピラマートという2つの成分は、いずれも脳に働きかけて食欲を低下させる作用を持ちます。食欲を減らして食べ物の摂取を減らすことで体重を減らすとうメカニズムです。ダイエットのサプリとかでよく見られる「体の中の脂肪を燃焼させて体重を減らす」という作用ではありません。

フェンテルミンは、脳内のノルアドレナリンやセロトニンの量を変化させて、食欲を低下させる作用を持ちます。すでに、アメリカでは、フェンテルミンが抗肥満薬として使われています。一方、トピラマートは、もともとはてんかんの治療薬として開発された薬で、脳の神経活動を調整する様々なタンパク質(L型カルシウムチャネル、電位依存性ナトリウムチャネル、AMPA受容体、GABA受容体)に働きかけ、神経活動を抑制する作用を持ちます。このトピラマートには体重減少という副作用が認められています。VIVUS社は、このトピラマートの体重減少作用と既存薬であるフェンテルミンと組み合わせることとで用いて、新薬として開発しようと考えたわけです。

これまで報告されている臨床試験の結果では、投与28週間後まで緩やかに体重減少がつづき、投与28週間後では服薬前に比べて10-15%の体重減少が認められました。その後、投与開始108週間後まで、体重はこのレベルに保たれました。この試験では、服薬前の体重が100kg前後・BMI値が36である人たちを対象としています。ざっくり考えて、半年で10kg減という感じでしょうか。この体重変化に伴って、血液中の脂質パラメータに関しても、服薬前に比べて改善傾向が出たとのことです。また、この試験では、重篤な副作用は認められませんでした。

Am J Clin Nutr. 2012 Feb;95(2):297-308.

この薬において気になるのは、副作用に関する問題点です。最初のリンク先の記事には心臓に対するリスクがかかれています。ただ、キューネクサが今回承認されたことから、リスクを上回るメリットが示されたということだと思います。もう一つ気になるのは、この薬が脳に働きかけて食欲を低下させる、という点です。食欲低下というのが「意欲を低下させる」のか「満腹感を速やかに起こす」のかはわかりません。ただ、このような本能的な要求を薬でコントロールすると、他の精神活動にも影響が出るのではないかとおもいます。

これまで、中枢性の抗肥満薬としてはリモナバンという化合物がありました。リモナバンもキューネクサと同様に食欲を低下させる作用を持っています。リモナバンは、うつや自殺企図を誘発することが発売後にわかり販売低下となりました。キューネクサについては、2年間(108週)の試験ではこのような副作用は見られていないようです。ただ、臨床試験で認められなかった副作用が、発売後、多くの人に使われる様になった時に見えてくるというのはよくあることです。

もちろん、体重低下作用が及ぼすメリットが、上記のようなリスクを上回るのであれば薬として用いることは可能です。あまりに体重が大きすぎて体に負担がかかり運動ができない、食欲自体になんらかの異常があって自分でコントロールができない、等の場合には、薬剤による治療が食餌療法などと共に併用されてもよいでしょう。今回の承認は、その点を踏まえたものではないかと考えます。

一方、これまでの経緯(リモナバンなど)を見るかぎり、普通の人にとっては、よほどの事情がない限り、キューネクサのメリットがリスクを上回ることはないと思います。例えば、美容のためのダイエットにキューネクサに頼って体重を減らすというのは、非現実的なものだと思います。

抗肥満薬は、美容目的のダイエットにつかうのではありません。「普通の方法では何ともしがたい肥満という病気の治療」に使うのです。健康な人が薬に頼って行なうダイエットは、メリットよりも大きいリスクのみを背負い込むことにあることが多く、ろくな結果になりません。

キューネクサが日本で承認を目指すという動きはないようですが、そうなると個人輸入などのルートなどで、事情が知らない人がキューネクサを服用するなんてことも起こるのかもしれません。公的機関は、今後の動きを注視しなければいけないと思います。

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[ 2012/02/25 15:57 ] 薬の話 | TB(-) | CM(-)
 

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十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。

薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。

観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。


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