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「考察」が「結果」に化けるとき はてなブックマーク - 「考察」が「結果」に化けるとき

新聞の科学記事で「〇〇の発見により、××の治療法につながる可能性がある」とういう表現をよく見かけます。ところが、この表現がいつのまにか「〇〇で××が治療可能」になり、時には「〇〇は××で治療できる」と化けてしまうことがあります。おそらく、伝達の回数が増えていったり、間に専門知識を持たない人が入ったような場合、伝言ゲームのような感じで内容が変化していくのだと思います。聞く人にとって、都合のよいところ、心地良い所(ネガティブな場合だと、不安なところ)が残っていくということなのでしょう。

科学の世界の論文を書くときには「結果」と「考察」を明確に分けるという鉄則があります。「可能性がある」という言葉は、この2つの中では「考察」に含まれる言葉です。上の例だと、「考察」がいつのまにやら「結果」に化けているということになります。

「結果」では、実験の結果得られた事実のみを書きます。そのため、基本的に断定的な書き方となります。実験方法に問題がないと判断できたら(これは実験方法を読んで判断します)、結果に書かれたことはまずは受け入れます。

「考察」では、結果をもとにした、実験者の「解釈」が示されます。この解釈は、結果のデータを組み合わせて得られることもありますし、過去の論文報告から得られることもあります。いずれにしろ、「実験者の頭の中」で「論理的に正しい筋道で」得られた「文章」であって、「事実」とは異なります。だから、「可能性がある」とか「示唆される」とかいう、ちょっと持って回った表現になります(英語だと、suggest とか implyとか likelyとか)。

だから、「考察」に書かれていることを信じるかどうかは、読んだ人に委ねられています。ひと通り結果や実験方法を読んだ上で、実験者の解釈を読んで、それを信じるかどうかは、最終的には読んだ人しだい。

もちろん、科学論文には査読というシステムがあり、最低限の議論の質の保証はしています。論文が学術雑誌に公開されるまでには、一回は専門家によるレビュー(評価)をうけ、これをクリアしないと受理されない仕組みになっています。とはいえ、論文が正しいかどうかを判断するのは、やはり読み手なのです。「この論文は言いすぎだ」「この論文の結果からは、こういう事は言えないよね」なんて議論はよくあります。

なので、「考察」と「結果」は似てるようで全く違います。考察はあくまで「考え」であって「結果」ではありません。「可能性がある」は「そうかもしれない」レベルの話で、「そうならない」ことがあってもおかしくはありません。

一般向けの科学記事だと、結果よりも考察的な内容が目立つことがほとんどです。このレベルの記事で、夢の様なことが紹介されていたら(たぶん、可能性がある、のような書き方がされてます)、あくまで「研究者の考えた物語」という感覚で読むのが無難だと思います。実際に信じられるの?というとこが気になるのなら、情報のもとになっている論文もしくは研究機関からのプレスリリースを読むことをお勧めします。



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[ 2012/02/14 22:44 ] ひとりごと | TB(-) | CM(-)
 

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薬作り職人

Author:薬作り職人
十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。

薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。

観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。


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