薬作り職人のブログ

新薬のアイデアを考える人から見たいろんな話。

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一般の人と業界の人からみると、意味が全然違う言葉(薬作り編)。 はてなブックマーク - 一般の人と業界の人からみると、意味が全然違う言葉(薬作り編)。

昨日、twitterで流れてきた話題で「一般の人と業界の人からみると、意味が全然違う言葉」というものがありました(#一般人と俺たちとでは決定的に意味が違う)

薬作りの世界で何かないかな、と考えて見たら、いくつか思いついたものがありました。小ネタですが、紹介してみます。

トリス
一般の人(年配の人?):サントリーの「トリスウイスキー」(アルファベットではTorys)
薬作りの世界:緩衝液として用いるTris(tris(hydroxymethyl)aminomethaneの略)



トリスウイスキーといえば、長い歴史を持つサントリーのウイスキー。サントリーの創業者である鳥井信治郎の名前に由来してるそうです。イメージキャラクターのアンクル・トリスとか、CMのフレーズである「トリスを飲んでハワイに行こう!」は、年配の方には懐かしいものではないかと思います。

一方、私達の世界では、細胞さんやタンパク質を扱います。このような実験では、pH(酸性・アルカリ性の度合いを示す数値)を一定にする必要があります。適切な量のTrisを含む溶液は、外部から酸やアルカリを加えても、溶液のpHが変化しにくくなっています。このような溶液を、緩衝液と呼んでいます。Trisを用いた緩衝液は、私達の世界では非常にメジャーなものです。これに慣れてると、「トリスを飲んでハワイに行こう」は、なんだかシュールに感じます。

サザン
一般の人:いわずもがな、サザンオールスターズ
薬作りの世界:サザンブロッティング法



サザンオールスターズは言うまでもないでしょう。私も、「いとしのエリー」とか「Ya Ya (あの時代を忘れない)」とか「希望の轍」とか、サザンで好きな曲は沢山あります。

一方、サザンブロッティング法は、特定の塩基配列をもつDNA(の断片)を検出するための方法です(詳しい方法についてはWikipedia サザンブロッティング)。

サザンブロッティングを略して言うと「サザン」になるのですが、これはサザンブロッティングを発明した「Edwin M. Southern」さんの名前に由来しています。生物学の世界では、サザンブロッティング法はアーティストのサザンに負けないくらい誰でも知ってる、メジャーで基本的な方法です。

PK
一般の人:サッカーでのペナルティキック
薬作りの世界:薬物動態(Pharmacokinetics)



サッカーでPKといえば、試合の中でも盛り上がりを見せるシーンの代表格でしょう。緊迫した空気の中、キッカーとゴールキーパーの一対一の勝負は、いつみてもハラハラどきどきするものです。

一方、薬作りの世界でのPKは、「薬が体の中にどれくらいの量が吸収されるか」「薬の体内の量がどのように変化するか」ということを表す「薬物動態」という言葉を意味します。例えば、飲み薬の場合を考えてみます。口から飲んだ薬が、消化管から吸収されにくかったり、体内であっという間に分解されてしまうと、薬の吸収量は非常に低くなり、効果を示すことができません。このような場合「PKが悪い」と表現します。また、効果を長く保ちたい薬の場合は、体内から出にくい性質が望ましく、効果をできるだけ短くしたい薬は、体内から速やかにでる性質が望ましくなります。これらの性質を調べることを「PKデータを取る」なんていい方をします。

サッカーのPKは「ボールがゴールに入るかどうか」、薬作りのPKは、「薬が体内に入るかどうか」が一番気になるところです。サッカーのPKというのは、入るのが当たり前(?)的なもの。一方、薬作りの世界でのPKは、実際に飲ませてみるまで体内に薬が入るかどうかは予想できません。同じ言葉でも、やっぱり違うものです。

追試
一般の人(特に学生さん):追試験
薬作りの世界:追試験



一般の人でも薬作りの世界でも、追試験という言葉はおんなじですが、行われるシチュエーションはだいぶ違います。

一般の人の追試験は、「試験がダメだったときに、救済措置としてもう一度受ける試験」のこと。幸いなことに、私はこの「追試」は受けたことがありません。試験のシーズンになると、twitterなんかでもこの単語はよく見かけます。

一方、薬作りの世界の追試験は「実験がうまく行ったときに、それが本当かどうかを確認するためめ行なう、一回目と同じ実験」のことです。同じ事を2回行なって、同じ結果が出ることを確認するということを「再現性を確認する」と言います。新しい結果を得た場合には、追試をすることは必ず要求されます。追試がうまく行けば、晴れて良い結果が出たとむねを晴れます。逆に、追試でうまくいかなかったら、「得られた結果はどこかおかしいんじゃないか」ということで、更なる検討が必要になります。

一般の人にとっても、私達にとっても、「追試の結果がドキドキするもの」という点では、共通したものがありますね。

追記(2010/3/11)
有機化学美術館・分館でも同じようなネタを取り上げています。
化学者と一般人で意味の違う言葉

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[ 2012/02/05 21:36 ] お薬作りの日記 | TB(-) | CM(-)
 

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薬作り職人

Author:薬作り職人
十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。

薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。

観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。


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