薬作り職人のブログ

新薬のアイデアを考える人から見たいろんな話。

スポンサーサイト はてなブックマーク - スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

このエントリーをはてなブックマークに追加

[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

薬の商品名が大事なわけ。 はてなブックマーク - 薬の商品名が大事なわけ。

一般の方にとっては、「薬の商品名というと、カタカナが並んでわかりにくいもの」というイメージがあるかもしれません。こんな記事を見ると、余計にそう思えるかも知れません。

朝日新聞;アルマールとアマリール 薬の取り違え多発 改名へ
 血圧を下げる薬の「アルマール」と、血糖値を下げる薬の「アマリール」。販売名が似ているため、医師や薬剤師が薬を取り違える事故が後を絶たないとして、アルマールを製造販売する大日本住友製薬は、名称の変更を厚生労働省に申請した。早ければ6月に新しい名称で売り出される。



アルマール(大日本住友製薬、主成分 アロチノロール塩酸塩)というのは、高血圧や狭心症、不整脈の治療に用いられる薬です。一方、アマリール(サノフィ・アベンティス、主成分グルメピリド)は、糖尿病の治療薬で血糖値を下げる薬です。この2つの薬の名前が似ているため、お医者さんや薬剤師さんが薬を取り違え、本来アルマールを処方されるべき人にアマリールを処方してしまうというトラブルが頻発しています。

アマリールは、糖尿病の患者さんでなくても、血糖値を下げる作用を持ちます。そのため、アルマールを処方されるべき人にアマリールが処方されると、血糖値が正常以下に急激に低下し、低血糖状態になります。低血糖状態では、動悸やふるえがおこり、血糖低下の度合いが大きいと意識がなくなり、ひどい場合には死につながることもあります。

アルマールとアマリールの取り間違えについては、以前から問題になっていました。取り間違えのパターンとしては、「薬剤師さんへの薬のオーダーの時に、商品名をまちがえる」「薬剤師さんが薬を調剤するときに、品物を取り間違える」「確認のときに取り違えを見間違えてしまう」などがあります。

医療機関側の対応としては、「薬をオーダーするためのコンピューターシステムに、取り間違えが起こりにくいような仕組みを取り入れる」「オーダーでアマリールが選択されると「糖尿病薬」と確認の表示が出る」「薬を渡す相手が糖尿病の感謝さんであることを確認する」などがあります。

しかし、やはり「似てる名前の薬がある」という根本的な問題点があるかぎり、どのような支援システムがあってもミスは起こりえます。今回のアルマールの商品名変更は、この根本的な問題点を解決するための最後の手段ということになります。

こう見ると、薬の商品名ってのは大事だと思います。商品名次第で、本来有益な薬が、人に害を与えてしまいます。とはいえ、「アルマールとアマリール」などのような、似たような名前がつくようなことさえなければ、薬の商品名は薬を扱う上で非常に便利なものなのです。

薬の名前には、商品名と一般名があります。一般名というのは、簡単に言うと薬の成分である化合物の名前です。一般名については、命名について一定のルールがある(同じ薬効の化合物は同じ語尾をつける、など)ので、似たような名前が沢山でてきます。例えば、糖尿病治療薬のDPP4阻害薬については、シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチン、リナグリプチンなんて感じで、グリプチンという共通の語尾がついています。この4つの中から、どれか一つをすぐ取り出せと言われると、(自分なら)ちょっと躊躇してしまうだろうと思います。薬の仕事してる人でもそうなのに、一般の患者さんにとっては全く区別がつかないのではないかと思います。

そんな時に、商品名は役に立ちます。共通の語尾に縛られず、印象に残る名前を自由に付けられる(他社が商標を押さえていない限り)。上に上げた4つのDPP4阻害薬の商品名は、ジャヌビア(グラクティブという商標名でも発売)、エクア、ネシーナ、トラゼンタ。一般名とは違って、覚えやすく呼びやすい名前になっています。

「自分がどんな薬を服用しているのか」を把握するためには、商品名というのは大事なものです。ややこしい一般名は、頭に入りにくく、イメージも湧きません。薬学を勉強している学生さんだと、このあたりは薬理学のテスト勉強で嫌というほど味わってると思います。薬については素人である患者さんならなおさらです。患者さんに「どんな薬を飲んでますか?」と聞いたときに、ジャヌビアという商標名なら出てきそうな気がしますが、シタグリプチンという言葉がすっと出てくるとは思えません。覚えやすい商品名というのは、使いやすい薬の重要な要素なのかも知れません。

たくさんの薬がある今の時代、他の薬と違った名前を選び出すこと自体、大変難しい作業となっています。商品名を担当している部署の方のご苦労には頭がさがる次第です。
関連記事

このエントリーをはてなブックマークに追加

[ 2012/01/12 22:50 ] お薬作りの日記 | TB(-) | CM(-)
 

スポンサードリンク

この日記のはてなブックマーク数

このブログが生まれて
最近のコメント
プロフィール

薬作り職人

Author:薬作り職人
十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。

薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。

観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。


薬&提灯 詳しくは
病院でもらった薬の値段
http://kusuridukuri.cho-chin.com/

お薬の名前の由来
http://drugname.onmitsu.jp/

ミニ提灯データベース
http://kentapb.nobody.jp/
でどうぞ。


本ブログに関するご質問・ご意見などはこちらまで↓
ご使用の際は、@マークを半角に直してください。

kentapb@gmail.com

トラックバック


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。
Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...