薬作り職人のブログ

新薬のアイデアを考える人から見たいろんな話。

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スパコンと薬。 はてなブックマーク - スパコンと薬。

スーパーコンピュータ(スパコン)の記事を時々見かけるのですが、スパコンの有用な応用分野として「新薬の開発」がよく挙げられています。

読売新聞
「京」応用スパコン輸出再開…富士通

 富士通は7日、来年1月から最先端スーパーコンピューターの輸出を約10年ぶりに再開すると発表した。理化学研究所と共同開発した世界一の性能を誇るスパコン「京」(神戸市)の技術を応用した新製品を、欧州などの政府機関や企業へ売り込む。

 新開発した「PRIME(プライム)HPC FX10」は、「京」よりもCPU(中央演算処理装置)の性能を向上させ、1台で毎秒2兆5000億回の計算ができる。1024台まで組み合わせることが可能で、最大で毎秒2・3京回(京は1兆の1万倍)の計算速度となる。毎秒0・1京回計算できるスパコンなら、価格は50億~70億円になる見込みだ。

 現在主流のスパコンは、心臓一拍の動きの解析に2年かかるが、京の計算速度を持つスパコンだとわずか1日でできる。コンピューター上で様々なシミュレーションを行うことができ、新薬の開発や、車の衝突解析など産業界への幅広い利用が期待されている。気象観測を行う各国の政府機関や大企業などから富士通への問い合わせが相次いでいるという。



「京」は、以前、あの「事業仕分け」で槍玉に上がり、「2位じゃだめなのか」という名ゼリフ(?)で一躍有名になったスパコンです。「京」の開発技術を更に進化させ、商業ベースに載せるところまで達成した、というのが、上記記事の内容です。

こういうスパコンの用途には「新薬の開発」というのが、決まり文句のように出てきます。具体的にどのようなことが出来て、どんな成果が出るのか。研究所にいる私にはいまいち実感できないのですが、それでも想像できるのはこんなところです。

病気の原因となるタンパク質にぴったり適合する化合物の設計ができる
薬を開発するときには、病気の原因となるタンパク質にうまく結合することが出来る化合物を設計しなくてはいけません。病気の原因となるタンパク質の構造は、X線結晶構造解析という方法で調べることができます。

薬を作るには、この構造にぴったりはまる化学構造を探せばいいように思われます。しかし、この構造はあくまで「結晶」、つまり特別な条件で作られた「固まり」の中での構造です。実際の生体内では、タンパク質は結晶の中でじっと静止しているわけではありません。

生体内では、タンパク質は細胞のなかの細胞質や細胞表面の脂質の上に浮かんでいます。浮かんでいるということは、周りを取り囲む水や脂質とタンパク質と絶えず触れ合っているということです。ということは、結晶の中でじっとしている時の構造と、生体内で水や脂質と触れ合っている構造は同じではありません。

実際に薬が作用するのは生体内なので、できれば水や脂質とタンパク質と絶えず触れ合っている状況を考えたい、と思うのは自然な考えだと思います。そして、このようなタンパク質の構造にうまく結合できる化合物の化学構造が、コンピュータで探しだせるとしたら。。コンピュータのなかで無数の化学構造を発生させ、パズルのように当てはまるものを探していくという作業は、新薬開発そのものです。

このような課題をコンピュータで扱うには、水や脂質とタンパク質と化合物の複雑な相互作用を計算しなくてはいけません。それには、莫大な計算量が必要になります。というわけで、スパコンが登場する、ということです。スパコンの性能が高ければ高いほど、早く作業が行えるということです。

とはいえ、スパコンが、私達研究者で実際に実験している研究者の代わりに、さくっと薬を見つけてくれるわけではありません。スパコンは、あくまでヒントをくれるだけ。生体内のタンパク質はこんな格好をしていて、それに合う化合物の形はこんな感じだと「予想できる」。あくまで予想です。

この予想が正しいかどうかを実際に確かめるのは、私達研究者です。で、そういう予想がどれくらいの確率で当たるものなのか。。。薬作りの成功確率が劇的に上がったという話は、まだまだ聞こえてこない様です。

コンピュータができるのは、与えられた計算を早くこなすこと。コンピュータにやらせる仕事の方法が正しいのかどうか、というのは、コンピュータの性能に依存するのではなく、コンピュータに仕事を与える人間(これも研究者)に依存します。スパコンの性能を上げるのは大事ですが、それを使いこなすためには他分野の基礎研究(もちろん実験をベースとした研究)が必要です。

スパコンにお金をかけるのもいいけど、その使い道を考えている他分野の人たちもきちんとサポートしないとね。



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[ 2011/11/08 22:33 ] 薬の話 | TB(-) | CM(-)
 

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Author:薬作り職人
十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。

薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。

観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。


薬&提灯 詳しくは
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