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放射性物質を分解する微生物? はてなブックマーク - 放射性物質を分解する微生物?

土壌中の放射性物質の除去、というのは、現在、大きな課題となっています。

土壌中の放射性物質を取り除くには、以下の2つの方法が考えられます。

1)放射性物質を含む土をどこか他のところへ持っていく
2)放射性物質を含む土から放射性物質のみを何らかの形で分離してとりだし、他のところへ持っていく

この方法は、いずれも放射性物質を「他のところへ持っていく」だけであり、放射性物質が持つ放射能(放射線を出す能力)自体をなくしてしまうものではありません。

さて、ツイッターで「放射性物質を分解する微生物」という話題を見かけました。とある微生物を、肥料と共に土壌にまくと、土壌中の放射能物質が減少するということらしいです。

googleで「放射性物質 分解」というキーワードで検索すると、確かに、この微生物関連のWebサイトがたくさんヒットします。で、そのようなサイトには「放射性物質分解消失」なんてタイトルが付けられていたりします。「放射性物質分解消失」を標榜する人たちの行っている実験は、pdfファイルで公開されています。

http://www.tidt.jp/pdf/%C2%8Dsaisyuhoukoku.pdf

この実験においては、土壌への微生物散布により放射性物質が減少することを主張しています。

この微生物が放射性物質をとりこみ、その微生物を何らかの形で回収することで効率的に放射性物質が除去できる、という仕組みであれば、最初に記した2)の方法だと考えることが出来ます。

ただ、この実験では、微生物を回収するという手順は踏んでいません。つまり、微生物を土中に散布することだけで、放射性物質の量が減少すると主張しています。微生物の中に放射性物質を取り込ませるだけならば、放射能自体が弱くならないと、放射性物質の量は変化しないと思うのですが。

残念ながら、微生物自体は、放射性物質の放射能を弱めたりなくしたりすることは出来ません。放射能は、原子を構成する原子核が放射線を出す能力なので、放射能を弱めたりなくすためには、原子核自体に変化を加えないといけません。生物が持っている化学的エネルギーでは、原子核に変化を加えることはできないので、微生物によって放射性物質の放射能を弱めたりなくしたりすることは出来ません。

というわけで、「微生物に放射能を減少させる作用がない」かつ「土から微生物を分離していない」ということは、放射性物質の量自体は変化していないと思われます。

こうしてみてみると、微生物を散布して土壌の放射性物質が低下した、というメカニズムについては、違う観点から考えたほうが良さそうです。

よくよく読んでみると、微生物を散布する際には、同時に液肥と水をまき、散布した部分の土壌をトラクターで耕すとのことです。

放射性物質の量は、土壌の一部をサンプリングすることで測定されています。もしかすると、液肥や水と共に耕したことで土壌が攪拌され、放射性物質が均一に分布することでサンプリング部位の放射性物質の量(不正確な表現ですが、土中濃度)が低くなったのかも知れません(ここで気を付けないといけないのは、この過程には微生物の関与があってもなくてもよいということです)。

このようなことが起こっているのか、を確認するには、微生物の散布なしに液肥と水をまき、散布した部分の土壌をトラクターで耕した部分を対照として設けることが必要です。しかし、この人たちの実験では、未処理の部分(耕していない部分)を対照としているので、トラクターによる耕作の影響を判断することはできません。

また、放射性物質を吸収した微生物が大量に増殖し、色々なルートで測定区域以外の地面に分布してしまった(その結果、土中濃度?としては減る)なんて可能性も否定はできません(この測定区域が完全に外界から隔離されていれば、別なのですが)。

本来は、この微生物に放射性物質を取り込む能力があるのか、それとも放射能を弱める効果があるのか、については、実験室レベルの実験を用いることで、手っ取り早く、簡単に調べることができます。このあたりのデータをしっかり取った上で、土壌の実験の解釈をしたいところです。

長々と書いてきましたが、要は、きちんと実験条件を設定したり、その前提となる実験データが提示されたりしないと、もっともらしい話をすんなり信用することはなかなか出来ないということです。もちろん、私の考察自体、ものすごく不十分なものであることもご承知おきください。
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[ 2011/08/16 22:47 ] ひとりごと | TB(-) | CM(-)
 

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Author:薬作り職人
十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。

薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。

観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。


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