世の中で普通に使われている薬が、突然回収や販売中止されることがあります。
先日、回収(自主回収)の対象になったのは、武田薬品工業の「ダーゼン」。痰をだしやすくしたり、手術や傷の跡の炎症による腫れを抑えたりするための飲み薬です。1968年に発売されて以来、40年以上用いられている古い薬です。同一成分を持つジェネリック品も、多数使用されています。今回の回収では、ダーゼンのジェネリック品も同時に回収となるようです。
武田薬品のプレスリリース
消炎酵素製剤「ダーゼン®」の自主回収について薬が回収される原因としては「製造過程で重大なミス・欠陥があった時」や「予測できない重篤な副作用が生じた時」など、安全性にまつわるものが多いのですが、ダーゼンの場合は「薬の有効性に疑問符がついた」というのが原因です。
医薬品というのは、臨床試験を行い有効性の検証を行い安全性の把握してから世の中に送り出されます。ただ、世の中で使われるようになったら、それ以降チェック機構が働かないか、というとそうではありません。
世の中に出た薬たちは、一定の期間ごとに「再評価」というチェックを受けます。薬が発売されて以降の科学技術の進歩や状況の変化を踏まえ、薬の有効性や安全性を一定期間ごとの再確認しようという制度です。
もちろん、ダーゼンもこの再評価の対象となる薬で、1995年にはこの再評価をクリアしました。ただし、この再評価の承認の際に、次の再評価までの間の臨床試験を要求されました。そして、その結果が「有効性を示さなかった」のです。
臨床試験の方法を見なおし再試験をする、という選択肢もあったのですが、武田薬品はこれを選ばず、ダーゼンの発売から手を引くという決断をしたようです。その決断の理由はわかりませんが、コストなどを考えると再試験の実施はペイしない、と考えたのかも知れません。
もともとダーゼンは、添付文書の表現を借りれば「本剤の体内での作用機序はなお解明されていない点も多く、また、用量・効果の関係も必ずしも明らかにされていない」という薬でした。
詳しい作用メカニズムはわからないけど、動物や患者さんに投与すると効果をしめす、という薬は、珍しいものではありません。医薬品としては患者さんに対する有効性が確認され、安全性について十分に把握が出来れば、世の中に出ることは十分可能です。
ただ、この肝心要の有効性がきちんと出せないとなると、さすがに表舞台から退場せざるを得ません。これまでにも、脳循環代謝改善薬と呼ばれる薬が、再評価で有効性を示すことが出来ず、販売中止になったことがありましたが、考えてみるとこれらの薬もダーゼンも似たような立場の薬だったのかなぁ、と思います。
近年の薬は、作用メカニズムをしっかり把握することで、薬効を確実にとらえようとしています。とはいえ、切れ味の鋭い、効果が高い薬を作るのは難しいものです。
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