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2011年、科学界で注目の話題(創薬編) はてなブックマーク - 2011年、科学界で注目の話題(創薬編)

国際的学術誌natureのWebサイトに、2011年、科学界で注目の話題について紹介されていました。この記事の中から、創薬(薬作り)に関連する項目について解説したいと思います。

naturenews: New year, new science

GWAS の価値が示されるか?
GWAS(ゲノムワイド関連解析)は、疾患とゲノムの特定領域との多くのリンクを解明している。しかし、これらのリンクの背景にあるせい科学的知見については、未だ多くは解明されていない。2011年には、遺伝子および非翻訳領域がどのように関連疾患に影響を与えるのかを説明するメカニズムが理解されることが期待される。肥満や糖尿病などの代謝性疾患が最も注目されている。



GWAS(Genome-wide association studies)というのは、ヒトゲノム(ヒトの遺伝子まるごと)のなかから、病気に関連する遺伝子(疾患感受性遺伝子)を探し出すために用いられる統計学的、情報学的な研究手法のことをいいます。
GWASは新薬のターゲット探索における強力なツールです。ただし、GWASはあくまで統計学・情報学的な手法であり、GWASによる疾患関連遺伝子と疾患の関連性について、生化学的な裏付けがまだまだ明らかになっていないというのが実情です。2011年は、疾患関連遺伝子と疾患の関連性をモノベースで解明できるかどうか、が注目されると思います。

Stem cells(幹細胞):研究への準備は万端
研究者たちは、体細胞をリプログラミングしiPS細胞を誘導し、他の細胞種(例えば皮膚の細胞を神経細胞へ)に誘導する方法を習得している。患者由来のIPS細胞は疾患研究のモデルとしてますます利用されるようになるだろう。例えば、精神疾患は、良い動物モデルがないために、細胞レベルでどのようなことが起こっているのかが少ししか分かっていない。また、患者由来のiPS細胞は、新規薬剤のスクリーニングや、既存薬剤のレスポンダー・レスポンダーを規定する要因の探索にも用いられるだろう。



IPS細胞(多能性幹細胞)は、生体内の体細胞(生殖細胞以外の細胞)から作成される細胞で、生体内の多様な細胞(神経細胞や心筋細胞など)に分化(変化)させることができる細胞です。iPS細胞の応用としては、臓器の再生を目的とした再生医療がすぐ思い浮かびますが、様々な病気の原因解明への利用も可能です。
 例えば、精神疾患の患者さんから取り出した体細胞からiPS細胞を作成し神経細胞に分化させるという方法が考えられます。精神疾患には、ヒトの疾患を反映する良い動物モデルがないことから、病気のときに神経細胞にどのような変化が起こっているのかを調べることは難しいとされています。iPS細胞から誘導された神経細胞は、病気のときの神経細胞の変化を調べるには格好の材料になります。さらに、精神疾患に対する薬剤のスクリーニング、薬剤の効果の個人差の原因の解明、などに用いることができる、と考えられます。

ヒトゲノム配列解析数の爆発的増加
今年、ゲノムシークエンスの費用は、1ゲノム当たり1000ドル以下に低下することは確実である。次世代のシーケンサーが市場に登場すると、フルゲノム解析の実施数は爆発的に増加するだろう。



ヒト遺伝子の個人間の差、正常・病気間の差、を知るためには、多くの人に対してヒトゲノム配列の解読を行うことが望まれます。次世代ゲノムシークエンス装置(ゲノム解読のための測定機器)の登場による高速化・低コスト化で、ヒトゲノム配列解析数が爆発的に増加することが予想されます。

C型肝炎治療
2011年にFDAによる承認が予想される新薬の中に、C型肝炎治療薬であるtelaprevirがある。telaprevirが承認されれば、C型肝炎ウイルスに感染する世界人口の3%の人々に治療手段を与えることになるだろう。telaprevirは、マサチューセッツ州ケンブリッジのVertex Pharmaceuticals社が開発した。



2010年アメリカのertex Pharmaceuticals社は、C型肝炎治療薬であるtelaprevirの新薬承認申請をFDAに対して行いました。臨床試験での高い有効率から、2011年中の承認が予想されています。これまでのC型肝炎治療に対するインターフェロン・リバビリン併用療法に加え、強力な選択肢が増えることになりそうです。telaprevirは、C型肝炎ウイルスの増殖に関与するNS3-4Aプロテアーゼというタンパク分解酵素の働きを抑える作用を持ち、体内での肝炎ウイルスの増殖を止めます。日本では、田辺三菱製薬が臨床試験を行っています。

Synthetic biology(合成生物学)を多細胞系で考える
もはや、科学者は複雑な合成生物学を単一の細胞内にとどめておくことは出来ない。昨年、研究者たちは、微生物のコロニー全体を周期的に協調して光らせる技術を発表した。このことから、細胞集団の振る舞いを制御を目的とした更に多くの報告が発表されることが期待される。このような「細胞のチームワーク」を開発する目的は、医薬品などに利用可能な働きを持つ微生物を得ることにある。



この元になった論文は、細胞のコロニーで周期的に発光する「時計」を作成したというnatureの論文です。

A synchronized quorum of genetic clocks
Nature 463, 326-330 (21 January 2010)


単一の細胞を規則的・周期的に活動させることは以前から可能でした。しかし、ここで取り上げられた報告では、多数の細胞から構成されるコロニーを同調させ、周期的に明暗を繰り返えさせることに成功しました。細胞集団を統一して周期的に活動させることができるということは、いわば細胞の塊に時計(もしくはタイマー)を導入することに相当します。医薬品への応用を考えた場合、皮下に細胞を埋め込み、規則的に生理活性タンパク質を産生させる(一日2回の皮下注射などが不要になる)などという応用が考えられます。

さて、2011年、これらの話題から出てくるニュースでもりあがるんでしょうか。良いニュースを期待したいものです。

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[ 2011/01/04 12:12 ] 薬の話 | TB(-) | CM(-)
 

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薬作り職人

Author:薬作り職人
十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。

薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。

観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。


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