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あくまでスタート。ヒトES細胞、臨床試験開始。 はてなブックマーク - あくまでスタート。ヒトES細胞、臨床試験開始。

アメリカのGeron社が「ヒトES細胞(胚性幹細胞)を用いた再生医療の臨床試験を開始した」と発表しました。ヒトES細胞を用いたヒト臨床試験は、世界初の試みということです。

対象となる疾患は「脊髄損傷」。脊髄とは背骨の中を走っている神経の束で、外傷などで脊髄を損傷すると、手足が動かせなくなったり、手足の感覚がなくなったり、排尿や排便のコントロールができなくなります。

今回の臨床試験は、ES細胞を用いて「オリゴデンドロサイト」という細胞を作成し、これを脊髄損傷部位に投与するという試験です(ちなみに、ES細胞とは、ヒト受精卵由来の細胞で、全身の臓器に変化(分化)する能力をもつ細胞です)。

オリゴデンドロサイトと脊髄損傷の関係を簡単に説明します。

オリゴデンドロサイトとは、神経細胞の周りを取り囲むミエリン鞘という部品を作り出す細胞です。脳が手足を動かす指令や、手足が受け取った感覚は、電気信号として神経細胞の中を伝わります。このような電気信号が神経細胞の中を通るためには、ミエリン鞘が必要です。

ところが、損傷を受けた脊髄では、損傷部位で激しい炎症が起こり、オリゴデンドロサイトが死んでしまいます。オリゴデンドロサイトが死ぬと、ミエリン鞘がなくなり、神経の中を電気信号が通りにくくなります。そのため、脊髄損傷が起こると手足が動かしにくくなったり、手足の感覚がなくなったりします。

今回のES細胞を用いた試験では、ES細胞から作成したオリゴデンドロサイトを損傷部位に供給することで、減ってしまったオリゴデンドロサイトを増やし、神経細胞のミエリン鞘の傷害が進むのを止める、ことを目的としています。

Geron社は、ES細胞からオリゴデンドロサイトを選択的に作成する技術を有しており、これまで動物で様々な実験を行って来ました。

Geron社の報告によれば、オリゴデンドロサイトを脊髄を損傷させたネズミに投与すると、ミエリン鞘の減少が改善し、歩行機能低下が改善します。また、ES細胞から作成されたオリゴデンドロサイトからは腫瘍はおこらず、脊髄以外の部位に移動して悪さをすることもないとのことです。

これらの動物実験の積み重ねと、患者さんに安定して供給できる細胞を供給できるシステムを構築した結果、ようやく臨床試験にたどり着いたというわけです。

ただ、この治療法も万能とはいいきれません。この治療法が有効なのは、あくまで神経細胞が生き残っていて、オリゴデンドロサイトの数が減っている状況(オリゴデンドロサイト自体は、電気を伝える神経細胞(軸索)ではない)だと思われます。

そのため、脊髄損傷から間もない患者さんにしか通用しない可能性は否定できません。ちなみに、今回の臨床試験の対象は、脊髄損傷から2週間以内の患者さんで、損傷を受けて間もない患者さんだということです。

今回の試験では、まずはヒトでの安全性を確認することが目的とされています。投与される患者さんは、最重度の損傷をもつ患者さんということで、投与されたオリゴデンドロサイトが効果を示すかどうかは微妙なところかな、と個人的には思います。

まずは、念入りに安全性を確認した上で、時間をかけてヒトでの効果を一歩一歩調べていくことになると思います。臨床試験開始は、あくまでスタート。ゴールはまだまだ遠いと思ったほうがよさそうです。




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[ 2010/10/12 23:49 ] 薬の話 | TB(-) | CM(-)
 

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十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。

薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。

観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。


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