今日放映されたNHKスペシャル「夢の新薬が作れない~生物資源をめぐる闘い~」は、非常に考えさせられるところが多い番組でした。
番組の内容を簡単にのべると
「新薬の成分・原料として必要な生物資源について、先進国(新薬メーカー側)と途上国(生物資源がある国)との折り合いがつかない。具体的には、新薬材料の需要増による生物資源の乱獲、新薬から得られる利益配分、などについての一致点が見いだせない」
ということ。
番組の簡単なまとめは、以下のページにまとめられています。
Nスペ「夢の新薬が作れない~生物資源をめぐる闘い~」実況新薬開発において、生物資源は昔から大きな役割を果たして来ました。伝統的に用いられてきた薬草がヒントとなり、そこから得られた成分が薬となる、というのは、新薬発見の王道です。
20世紀後半になると、有機化学合成の技術が発展し、このような生物資源由来ではない、純粋な化学合成による薬が主流となるようになりました。これらの薬が、さまざまな病気の治療方法を進化させたのは、みなさんご存知のとおりです。
しかし、このような有機合成由来の新薬開発にも、やや手詰まりの状況がみえてきたりもしています。いくらヒトの手で多種多様な化合物を合成しても、効くモノがでてこない、、、
そんな中、再び生物資源に目が当たるようになったのも自然なことだと思います。
ヒトで何らかの生理作用がわかっているもの、天然物として生理作用が分かっているものを何とかして薬に出来ないか。「効くかどうか、全くめどが立たないものを一から合成する」よりは、「目のありそうな生物資源を見つけて、そこから目的とする成分を取ってくる」方が、はるかに確実で楽、というわけです。
ここ数年の間に、複数の薬物が天然資源から発見され、実際に薬として使用されたり、臨床試験を経て市場に出るところまでこぎつけました。このような薬は、生物資源(主に植物)を材料とし、薬効成分を抽出して作られます。
ここで問題になるのは、製薬メーカーがある先進国と生物資源を供給する国との関係です。生物資源を持つ国は、自分の国の植物や動物をメーカーに持って行かれて薬にする、ということになります。
この「持って行かれる」というところで、いろんな問題が起こります。
先進国での薬の需要が増えると、生物資源の乱獲が起こり途上国の生態系が乱れます。といって、乱獲を止めようとすると、乱獲によって生計を立てている途上国の人たちが困ります。需要と供給と生態系がからむ問題です。
製薬メーカーが計画的に生物資源の栽培なり管理なりをしていないことが、乱獲の原因になっているのは間違いないのですが、このあたりの制度整備というのはきちんとされている様子はありません。これでは、問題がおこるわけです。
また、当然のことながら、途上国は生物資源によって得られる薬の利益から、自分たちへの配分を要求します。この利益配分の比率で、製薬メーカーと生物資源を持つ国との間で認識の違いがあります。
製薬メーカーは、(薬の種をみつけるところは節約できたとしても)巨額な研究費を回収しなくてはいけないので、あまり高い利益配分を提示することは出来ません。しかし、途上国側は「資源の持ち出し」ということで大きな金額を要求します。
一方、生物資源から新薬が発見されたとしても、この新薬を純粋に化学合成することができれば、生物資源の移動はおこりません。このような、材料としての生物資源の異動が怒らない場合、途上国にはどれくらいの利益配分をすればよいか。この問題についての解決案は未だ出ていません。
薬作りを会社の活動として行うからには、さらなる新薬開発への担保として「ある程度の利益の確保」が必要です。しかし、途上国という他者との関係がある以上、あまり独りよがりなこともいえません。
このあたりの調整については、おそらく企業レベルでは解決は難しく、国と国との交渉レベルですり合わせをしないといけないと思います。薬作りの研究現場とは離れた場所の話ではありますが、このような現状があることはきちんと把握しておかないといけないと思います。
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