薬作り職人のブログ

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なんとも、太っ腹な話。 はてなブックマーク - なんとも、太っ腹な話。

今週の学術雑誌Natureに、英国の製薬会社グラクソ・スミスクライン(GSK社)の研究陣による興味深い論文が載っていました。

Thousands of chemical starting points
for antimalarial lead identification


論文の内容を簡単にまとめるとこんな感じ。

「GSK社がもってる200万化合物からマラリアの治療薬の種になりそうな化合物を13000個ほど見つけました。データベースに載せるので、興味があったらマラリア新薬開発に役立ててね」

なんとも、太っ腹な話です。

マラリアは熱帯地方で猛威を振るっている感染症です。ハマダラカという蚊に住み着いているマラリア原虫という微生物が病気の原因。ハマダラカに刺されることで感染し、高熱や頭痛、吐き気などの症状が起こります。重症の場合は、意識障害や腎不全などをおこし死につながることもあります。

マラリアは古くから存在する病気で、現在では何種類もの治療薬が存在します。それでも、2009年現在、全世界で2億4千万人の患者と86万人の死亡者を出しているのです。

マラリアによる患者数や死亡者数が減らない原因としては、マラリア治療薬がすべての人々に行き渡らないとか、マラリア治療薬に対して抵抗性をもつマラリア原虫がいる、などの理由が挙げられます。

今回の論文は、マラリアの新しい治療薬を開発するためのキーとなるデータを広く公開するものです。

実験としては、それほど複雑なことをしているわけではありません。GSK社が持つ200万個の化合物ライブラリーの中から、マラリア原虫を殺すが普通の人の細胞を殺さない化合物を探し出す作業を行った、というだけです。新しい技術も特別に費用がかかる事もしていません。

この論文を特別なものにしているのは、「メガファーマ(巨大製薬会社)のライブラリーをつかっている」ということです。大規模ライブラリーを持たない小さなベンチャー企業ではこのようなことは行うことは出来ません。

そして、マラリアの治療薬開発という公益的な目的で、ここまで大規模なスクリーニングデータを公開するというのは私は見たことがありません(今までにあったとすればごめんなさい)。

マラリアの治療薬開発は、歩みが遅いと言われています。先進国の製薬会社にとっては、確かに熱帯地域の感染症は利益にも結びつかず、政府などの補助なしに大規模な研究費を投入するにはリスクが高い領域です。

そんななか、GSK社が今回公開したデータは、新薬開発の初期の初期段階をスキップすることができる(新薬の種のヒント)を教えてくれるとても重要なものです。新薬開発の取っかかりとしては、非常にありがたいデータです。

とはいえ、このデータをもとに製薬会社が実際にアクションを起こすかどうかはまだわかりません。もしかしたら、小さなベンチャー企業は、自分たちのアイデアをこのデータに当てはめて、積極的に新薬開発に参入するかも知れません。大企業にくらべ機動性があるベンチャー企業にとって、GSK社のデータは宝の山に見えているかも知れません。

今回のデータから新薬がでるとしても、それはまだまだ先のことになります。それまでの間は、マラリアの感染予防(蚊の駆除、ワクチン開発)などでなんとかしのぐしかありません。この辺りの対策にもGSK社はいろいろな援助プログラムを動かしています。

それに比べ、自分の会社を含めた日本勢の動きは鈍いような気がします。「会社の規模が違うとはいえ、なにか手を出せないものなのかなぁ」と論文を読みながら思うのでした。



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[ 2010/05/23 23:43 ] 薬の話 | TB(-) | CM(-)
 

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薬作り職人

Author:薬作り職人
十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。

薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。

観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。


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