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創薬研究者が書いた本「医薬品クライシス~78兆円市場の激震」 はてなブックマーク - 創薬研究者が書いた本「医薬品クライシス~78兆円市場の激震」

今日、一日かけて読んだ本は「医薬品クライシス~78兆円市場の激震」(佐藤健太郎 著)。「薬と製薬業界」について、新薬研究の最前線にいた研究者が、的確かつ分りやすく解説した、大変面白い本です。

著者の佐藤健太郎氏は、2年前まで製薬企業で新薬研究に携わっていたバリバリの創薬研究者です。企業では、有機化学のプロフェッショナルとして、十数年の間、新薬候補化合物の合成に携わってきました。

佐藤氏は、企業に在籍中から、Webサイト「有機化学美術館」を主催し、膨大な有機化学の知識とすばらしいCGを駆使して、医薬品をはじめとする様々な分子の解説記事を書かれていました。

佐藤氏は、2年前に企業を退職し、単行本や雑誌連載の執筆活動をしつつ、現在では東京大学理学部の広報担当特任助教として、化学という学問の世界の広報に励んでおられます。

以前、サブブログ「創薬研究者のメモ書き」で、「研究者は、ぜひブログを書いてみるといい。」なんて記事を書いたのですが、今回の佐藤氏の著作はまさにこれを地でいったものです。

「製薬業界」というのは、けっこう閉じた世界で、世の中に十分な情報がいきわたっているわけではありません。知られていないということは警戒感に結びつき、良いことはなにもありません。

私も、業界人としてできるだけいろんなことを書きたいとは思っているのですが、やはり「なかのひと」である制約もあり、無制限に思ったことをかけなかったりもします。このあたり、佐藤氏は、ばんばん気持がいいくらい筆を飛ばして、さまざまな情報を提供してくれます。この本を読めば、現在の薬と製薬業界を取り巻く問題点は大体把握できると言って良いでしょう。

これまでの「薬の本」というのは、大学の先生が書いたやさしい教科書のような本か、新薬開発に成功した研究者の「サクセスストーリー」、もしくは全く現場を知らないマーケティングの立場からの業界解説本というのが主なものでした。

この本の作者の佐藤氏は、その点全く異なります。現場で様々な新薬開発の失敗の過程を体験した、まさにごく普通の研究者。著書の中で「十数年研究し、化合物を世の中に送り出すことができなかった」と記していますが、これはこの業界ではふつうのこと。私も、まさにその通りの研究人生を歩んでいます。

そんな普通の研究者の目線から見た新薬開発の最前線は、苦難を乗り越えるための工夫の連続であり、さまざまな外因と戦わなくてはいけない茨の道。そして、それをわかっているだけに、佐藤氏から研究者におくられてるエールには、私は感激しております。

というわけで、「医薬品クライシス~78兆円市場の激震」は、薬に興味を持つ持たないに関わらず、全ての人におすすめの良書です。以下、簡単に書評(Twitterでつぶやいたもの)を載せておきます。書評なんてしたことがないのですが、参考となれば幸いです。


1-2章:企業の創薬研究者(化学系)だった筆者による「薬の作用メカニズム・新薬開発の過程」の説明は、教科書的な記述ではなく新薬開発現場の視点から描かれていて新鮮。専門用語もあるが、うまい例えでイメージがつかみやすい。

3章:医薬品には不可避の副作用についての話。リスクに注目しすぎる風潮を問題視、ベネフィットを見据えた議論をすべきという主張。「副作用」=「薬害」ではない、ブログなどでの情報発信の必要性の指摘。全く同意です。

4章:薬価制度、特許・ジェネリック医薬品、ブロックバスターに振り回され、メガファーマへの形成に至る新薬メーカーの姿が生々しく描かれる。現場の研究者の視点から見た「製薬会社合併の功罪」はとても興味深い。

5章:新技術の開発・知識の増大・多額の研究開発費にも関わらず2000年代になってなぜ新薬が生まれにくいのか、外部要因・企業の内部要因にわけて丁寧に考察されている。内部要因は、現場の人間として同意するところが多い。

6章:今後の製薬企業のあり方。薬を世の中に届けるには、製薬会社の存在・競争が必須という主張は、筆者からの現場の研究者へのエールと思いたい。抗体医薬以降の新薬開発トレンド、先は不透明ながらも希望はある。さてどうなるか。

全体の感想:薬と製薬業界の現状を、新薬研究最前線にいた著者が的確に描く良書。薬は全ての人間にとって重要なモノであるので、全ての人に読んで欲しい。ハードルは低く読みやすい。特に薬学生は、薬剤師・研究の志望問わず必読。

追記1:実は「あとがき」が一番の問題提起のような気がする。最後まで読みましょう。

追記2:佐藤氏はTwitterでも活動しておられます。アカウントは、@OrgChemMuse。感想などつぶやくと、泣いて喜ばれる(笑)と思います。

アマゾンで購入できます。


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[ 2010/01/17 01:53 ] 薬の話 | TB(-) | CM(-)
 

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Author:薬作り職人
十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。

薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。

観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。


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