薬作り職人のブログ

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決定!「2009年10大分子」 はてなブックマーク - 決定!「2009年10大分子」

私たちの生活のなかでは、さまざまな「分子」が活躍しています。私が仕事で携わっている医薬品、生活の中に登場する様々な化学物質、私たちの体の働きをコントロールする酵素などのタンパク質。これらは、みんな「分子」です。また、学問の世界では、科学者の夢や苦労の結晶として、毎年いろいろな「分子」が世の中に送り出されています。

科学の世界に籍をおく私たち研究者には「分子」の世界は身近なものです。しかし、専門外の方には逆になかなか「分子」の世界が見えないことも確かです。

昨年の暮、インターネット上のサービスTwitterで「2009年を代表する10大分子ってなんだろう」という話題が起こりました。そこで、Twitterに参加している化学・バイオ関連の方々に「2009年話題になった分子」を推薦してもらい、投票と話し合いによって「2009年10大分子」を決めようというTwitter上のイベントが行われることになりました。私は、@drug_discoveryというアカウント名で参加させていただきました。

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「2009年10大分子」の企画ページ。投票結果は、関連URLの「シート」から見ることができます。

参考リンク:「10大分子」-- 第一回(2009年)

ネットサービスTwitterについては、このブログでも記事にしています。

参考リンク;Twitterでつぶやいてます。
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昨日、この「2009年10大分子」の審査会(という名の楽しいおしゃべり)がTwitter上で行われ、無事、2009年を代表する10個の分子が選ばれました。みんな、科学の世界を驚かせたり、身近な生活に影響を与えたり、私たちの将来に希望を与えてくれる分子たちです。以下、簡単に説明したいとおもいます。

1. ラパマイシン
ラパマイシンを投与したマウスの寿命が、普通のマウスに比べ1割伸びる(ただしメスのみ)という実験結果が昨年報告されました。この話題は、学術雑誌サイエンスでの2009年10大ニュースにも選ばれ、衝撃度の高さを物語っています。ラパマイシンはヒトの手で合成された分子ではなく、イースター島の土の中から見つかった天然由来の分子です。寿命という自然から与えられたものが、自然から見つかった分子によってコントロールされるというのは、なにか深いものを感じます。ラパマイシンが、そのまま老化防止とか長寿の薬になることはないと思いますが、長寿の秘訣を知るための道具としては有用なものであると思います。さらなる研究の進展が望まれます。

2. E7389
大学の研究者と製薬会社エーザイの研究陣が、24年かけて医薬品にまで育て上げた化合物。昨年、進行・転移性乳がんに対する抗がん剤として、スイスで申請までたどり着きました。24年前、海の生物クロイソカイメンが作り出すハリコンドリンBという化合物に、強い抗がん作用があることが発見されたのがスタートです。その後、ハリコンドリンBの構造の一部を取り出して改良したE7389が強い抗がん作用を持つことが分かりました。このE7389は、非常に複雑な構造をしていたため、医薬品とするに耐えうるだけの量をヒトの手で化学合成するには、合成化学者のまさに血のにじむような苦労と工夫と努力が必要でした。化学者たちの執念から生み出された大きな成果に、心から拍手を送りたいと思います。

3. ペラミビル
タミフル・リレンザに続く第3の抗インフルエンザ薬として期待されている新薬です。作用メカニズムは、タミフル・リレンザと同じ「ノイラミニダーゼ阻害剤」なのですが、注射剤というところが他の2剤と異なっています。選択枝が増える以外に、注射剤であることから、飲み薬や吸入薬がつかえない重篤な患者さんなどへの使用が可能になるなどの利点が期待されます。アメリカのバイオクリスト社が開発し、日本では塩野義製薬が商品化にこぎつけました。世の中の要望に答えた、極めて速いスピードでの承認申請は、同じ業界の人間として頭が下がります。異例の早期承認が予想されるペラミビル、実戦投入も間近です。

4. 二酸化炭素
地球温暖化問題にでてくるCO2とは、この二酸化炭素。世界中の政治家が集まったCOP15(国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議)では、二酸化炭素の排出量をどうするかで、喧喧囂囂(けんけんごうごう)の議論が繰り広げられました。温暖化問題と二酸化炭素の関わりについては反論する人達も見られますが(データ捏造問題なんてのもありました)、二酸化炭素の放出の原因となる化石燃料(石炭・石油)を節約する生活スタイル自体は、追求されてしかるべきと考えます。

5. 青色色素デルフィニジンlavonoid 3',5'-hydroxylaseH遺伝子
「青いバラ」の「青」を作り出す分子。「青いバラ」は、多くの人達があこがれ、開発を試みてきたのですが、どうしてもこれまで創りだすことができませんでした。サントリーの研究者たちは、20年の時間をかけて、この分子を用いることで「青いバラ」の商品化に成功しました。私の大学時代の知人も十数年前に「青いバラをつくるのが夢なんだ」と語っていました。このニュースを聞いたら感無量なのではないかと思います。

6.DPP4
糖尿病治療薬の新しいターゲットタンパク質です。DPP4は、GLP1というホルモンを分解する酵素。DPP阻害薬と呼ばれる薬は、GLP1の分解を止めます。GLP1は、血糖値を下げるホルモン「インスリン」の分泌を増やし、血糖値を上げるホルモン「グルカゴン」の分泌を減らし、血糖値が上がらないようにコントロールします。DPP4阻害薬は、海外ではブロックバスター(大人気商品)となり、昨年の暮には、日本初のDPP4阻害薬が発売されました。

7. BSI-201
これまでの治療薬が効かない「トリプルネガティブ乳がん」の治療薬として期待されている化合物。臨床試験のなかの厳しい関門「フェーズ2試験」を突破し、実用化へ大きく近づきました。続く「フェーズ3試験」をクリアすると、承認への道が開かれます。BSI-201は、PARPという酵素タンパク質の働きを止めるPARP阻害薬と呼ばれる薬です。以前は、PARP阻害薬は、脳梗塞などで起こる神経死を止める薬として開発されていたのですがうまくいきませんでした。それが、抗がん剤として活躍するという意外な転身は、とても面白いと思います。

8. オセルタミビル
オセルタミビルとは、ご存知「タミフル」の成分名です。新型インフルエンザに明け暮れた2009年には欠かせない分子と言えるでしょう。新型インフルエンザが予想より軽症であったとはいえ、タミフルの存在によって多くの人達が助かったのも事実であることを忘れてはいけません。

9. L-グルタミン酸
L-グルタミン酸は、「味の素」の主成分(正確には、L-グルタミン酸ナトリウム)、「うま味」の原因である分子です。日本人の池田菊苗によって1908年に昆布のうま味成分がL-グルタミン酸ナトリウムであることが発見され、1909年5月20日 に「味の素」として発売が開始されました。つまり2009年は、「味の素発売100年」の年だったわけです。私たちが口に入れている様々な調味料も、味の正体はすべて分子であることを忘れてはいけません。

10. リボソーム
生物の細胞の中で、タンパク質合成に携わる分子です。巨大な分子であり、そのタンパク合成メカニズムについては、多くの研究者が様々な手法で研究を重ねてきました。そして、リボソームの構造や機能を解明した3人の化学者に、2009年ノーベル化学賞が贈られました。20世紀の生命科学がたどり着いた、偉大な研究成果の一つを代表する分子です。

というわけで、どの分子もそれぞれに個性的なエピソードを持つことがわかります。長い努力の末成功にたどり着いた分子あり、時代の波にもまれた分子あり、これから期待の分子あり、生活に密着した分子あり、まさに、「2009年10大分子」に値する分子たちだと思います。

今回は、急な企画だったこともあり、応募分子が医薬・バイオ系に偏ったイメージが有ります。世の中には、まだまだたくさんの分子があり、活躍しています。今年度も、「2010年10大分子」なる企画を立ち上げることがあれば、その時はもっと多くの方々から様々な分子を提案していただけるよう、いろいろと工夫をしていきたいと思っております。

最後になりましたが、大変面白い企画を発案された@ecochemさん、様々な足回りを整えていただいた@az4uさん、快く審査を引き受けてくださった @kasoken @chemstation @ecochem @OrgChemMuse @az4uの皆さん、そして、多くの分子をエントリーしていただき、また、さまざまなつぶやきでイベントを盛り上げていただいたイベントの主役である多数のついったーの方々、に深く感謝申し上げます。


なお、今回の「2009年10大分子」に関しては、化学系ポータルサイト、ケムステーションさんでも取り上げられています。イベントの発生過程、分子の構造式など情報豊富です。ぜひ、のぞいてみてください。

参考リンク:2009年10大分子発表!

また「10大分子」の2010年以降のイベント実施のためのwebサイトも開設されています。興味を持たれた方は、ぜひ参加してみてください。

参考リンク:Molecule 分子

【さらにお得なお知らせ。】
 @ecochemさんより
 「10大分子」関係者(観客を含む)は「サイエンスカフェにいがた」 参加費400円を無料にさせていただきます(旅費は自己負担...)。お申込みの際『10大分子を見た』とタグとともにお書きください。

サイエンスカフェとは、「喫茶店や書店,科学館・博物館など日常的な空間を利用して,専門家と市民が一緒になってサイエンスの奥深さやおもしろさを語り合い討論する場」として各地で定着しつつあります。「サイエンスカフェにいがた」は、1/9に新潟市にて開催されます。詳細は、以下のリンクまで。

参考リンク:サイエンスカフェにいがた

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[ 2010/01/06 23:15 ] 薬の話 | TB(-) | CM(-)
 

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薬作り職人

Author:薬作り職人
十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。

薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。

観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。


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