ブログの読者さんのコメントで初めて知ったのですが、どうも「輸入インフルワクチンで不妊が起こる」というデマが流れているようです。
「輸入インフルワクチンで不妊が起こる」というのは嘘です。根拠は全くありません。
出所となっているサイト(あえて晒しません)によると、以下のような話。
「輸入インフルエンザワクチンには、添加剤としてMF-59というアジュバント が使われている」
「MF-59は、もともと動物用の不妊ワクチンに含まれていた物質である。だから、不妊ワクチンと同じ組成をもつ輸入インフルエンザワクチンを打つと不妊になる」
アジュバントというのは、ワクチンの効果を高めるために使われる免疫増強剤の一種です。詳しくは、以下のリンクを参照してください。
ワクチンの隠し味「アジュバント」今回のデマでは、「アジュバントとして使われているMF-59に不妊作用がある」ということになっています。これは大きな誤りです。
不妊ワクチンは、「精子または卵子を構成する特殊なタンパク質を体内に投与し、体内でこのタンパク質に対する抗体を作って、精子や卵子に対する免疫反応を起こし、不妊を起こす」というものです。
ここで、気をつけなくてはいけないのは、「不妊ワクチンが不妊を引き起こす原因となる物質」は、「動物の精子または卵子を構成する特殊なタンパク質」だということです。アジュバントは、「動物の精子または卵子を特殊な構成するタンパク質」に対する抗体を産生する「手助けをする物質」に過ぎません。
だから、アジュバントだけを投与しても、不妊は起きません。「動物の精子または卵子を構成する特殊なタンパク質」を含まないインフルエンザワクチンに、アジュバントが添加されたからと言って、不妊が起こることはありません。
新型インフルエンザワクチンについては、余り情報がいきわたっておらず、さまざまな憶測がながれています。現在のところ、安全性については、通常の季節性インフルエンザワクチンと同等程度の副作用が認められるとされています。
インフルエンザワクチンには、まれに重い副作用(接種者100万人について1-2人のギラン-バレー症候群)が認められるのは事実です。しかし、この副作用はアジュバントがなくても起こるものです。ワクチンを接種しないことでインフルエンザが悪化して起こる、脳症や重度の肺炎が起こるリスク(確率)の方が、遥かに高いと考えられます。
私なら、迷わず家族にワクチンを接種させます(新型インフルエンザワクチンが手に入ればの話ですが)。
インフルエンザワクチンの接種は任意ではありますが、少なくとも「輸入インフルワクチンで不妊が起こる」という理由で接種しないということだけは止めてください。
デマによって健康被害が起こることだけは、避けなくてはいけません。
追記:輸入ワクチンについては発がん性の恐れがある、との噂も見かけますが、問題はないと考えます。発がん性の有無については、詳細な検討が必要です。しかし、今回のワクチンについては、投与量が少ないということ、ぜいぜい2回の投与のみであるということ、だけを考えても、問題はないものと考えます。
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