
フランスに出張で行ったとき、よく間違えたのがミネラルウォーターと炭酸水。コンビニでは、似たようなラベルをつけたペットボトルが売られています。フランス語のラベルが読めず、何度か間違えて買ってしまいました。
普通の水だと思って飲んだら、なんともいえない酸いというか苦いというか、変な味。でも、この味をおいしいって飲むヒトも多いんですよね。
そんな炭酸水の味を感じるメカニズムを解明した論文が、学術誌サイエンスの今週号に掲載されました。
Science 16 October 2009:
Vol. 326. no. 5951, pp. 443 - 445味の原因となる物質(砂糖とか塩とか酸とか)は、舌の表面にある味覚受容体というタンパク質を活性化し、味を伝える神経細胞に電気信号を発生させます。この電気信号が脳に伝わり、いろいろな味として認識されるのです。
炭酸水は二酸化炭素ガスを水に溶かしたものです。そこで、研究者たちは、二酸化炭素によって活性化させる味覚受容体を探そう、という方針を立てました。
遺伝子操作により、特定の味覚受容体をもたないネズミ(ノックアウトマウス)を作成します。炭酸水を舌に乗せ、どの味覚受容体をなくすと味を感じなくなるかを調べます。味を感じたかどうかは、味を伝える神経細胞に電極を当て、電気信号が起こるかどうかを調べることで調べます。
その結果、PKD2L1という味覚受容体を持たないネズミだけが、炭酸水の味を感じないことがわかりました。PKD2L1は、酸っぱさを感じる働きを持つ味覚受容体として知られていることから、炭酸水の酸っぱさの原因をうまく説明できると考えられました(ちなみに、このネズミは甘みは正常に感じることができます)。
また、このネズミでは、炭酸脱水酵素IVというタンパク質も持っていないことがわかりました。炭酸脱水酵素IVとは、二酸化炭素と水を反応させて、炭酸水素イオンと水素イオン(簡単にいうと酸)にする酵素です。
「もしかしたら、この酵素も炭酸水の味に関係するのではないか」と考えた研究者は、炭酸脱水酵素IVの働きを抑える物質(阻害剤)を正常なネズミに飲ませてみました。すると、ネズミは炭酸水の味を感じなくなりました。
この結果から、炭酸水の味を感じるメカニズムは以下のようなものではないか、と考えられます。
・炭酸水のなかの二酸化炭素が、炭酸脱水酵素IVによって炭酸水素イオンと水素イオンに分解される。
・この酸がPKD2L1を活性化して、酸っぱいという感覚を脳に伝える。
ただ、炭酸水の味はこれだけで全て説明できる訳ではないようです。二酸化炭素は、気泡となって独特の蝕感を舌に伝えるのですが、この蝕感が隠し味となり、酸っぱさにさらに奥深さ?を付け加えているとも考えられます。
私にとって、炭酸水はおいしい味ではありません。ただ、炭酸水をおいしいと思えるヒトももちろんいます。酸っぱさ・触感とおいしさをつなぐものは何なのか、炭酸水のおいしさの個人差は果たしてどこから来るのか。
一つの事実がわかると、かえって知りたいことが増えていく。科学ってそんなものなのだと思います。そこがおもしろいんですよね。
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