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第I相臨床試験が中止になる理由。 はてなブックマーク - 第I相臨床試験が中止になる理由。

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新薬の開発には、ヒトで薬の効果・安全性を調べるための臨床試験が欠かせません。その中でも、第I相臨床試験(フェーズ1)は最初に行なわれる試験であり、健康な人に新薬の候補化合物を投与し、化合物の安全性および体内への吸収性を評価します。

臨床試験の前には、動物を用いた徹底的な毒性試験・安全性薬理試験を行い、どのような副作用がヒトで起こりうるのかを予想します。それでも、実際に化合物をヒトに投与したときに、副作用が生じて臨床試験が中止になることは避けることが出来ません。

この試験中止の理由というのは、あまり表に出てくることはありません。しかし、先日行なわれた学会(日本トキシコロジー学会:医薬品の毒性を調べる専門家で構成される学会)では、製薬会社(エーザイ)から試験中止の具体例を示す発表が行なわれました。

以下、この発表を紹介した記事の引用です。

引用元へのリンク
http://www.yakuji.co.jp/entry14141.html

ーーーーーーーーーー引用はじめーーーーーーーーーーーーーー

今回、安全性の理由で開発中止となった事例として公表されたのは、ナトリウムチャネル阻害薬(神経性疼痛)、カルシウムチャネル阻害薬(急性脳梗塞)、DPP‐4阻害薬(2型糖尿病)の3化合物。そのうちナトリウムチャネル阻害薬の第I相試験は、低用量投与時に頭痛、立ちくらみ、疲労感の有害事象が見られたものの、600mgと1000mg投与群を追加したところ、高用量の1000mgを投与した1例で間代性強直性けいれんの大発作が出現した。

 そこで、臨床評価を行った結果、薬剤の影響が最も高いと判断された。最終的に、脳性発作は低用量投与時に発現する有害事象から予測できないとされ、また鎮痛剤として使われる化合物は、高用量を誤用されやすい傾向があることから、開発中止となった。

 カルシウムチャネル阻害薬の第I相試験では、初回投与群5例、反復投与群3例で起立性低血圧が発症。特に想定する最少治療用量以下の100ng/mLから相次いで発生した。この化合物は、脳卒中後の神経保護作用を適応症としていたが、起立性低血圧が脳卒中を悪化させる可能性があることなど、主要な有効性予測に反する作用が見られたため、開発中止が決定された。当時、起立性低血圧を予測する実験系がなかったことも要因と考えられている。

 一方、DPP‐4阻害薬は、毒性試験の結果から非常に良好な安全性プロファイルを得ていたが、第I相試験では10mg投与群の6例中1例に発疹が発現。 80mgの高用量群では6例中4例と増加した。発疹は重篤な有害事象ではなかったが、明らかに薬剤に起因していることに加え、反復投与試験で、より重篤な発疹が起こる可能性もあると判断された。

ーーーーーーーーーー引用おわりーーーーーーーーーーーーーー

ナトリウムチャネル阻害薬については、その作用メカニズムから抗けいれん薬としての薬効が予想されるのですが、けいれん発作誘発という予想とは逆の副作用が出てしまいました。動物に化合物を大量に投与してけいれんが起きるかどうか、という確認試験は(薬の種類を問わず)当然行なわれていたはずなのですが、この化合物の場合は拾いきれなかったようです。

カルシウムチャネル阻害薬は血圧降下薬としても使われることがあるため、起立性低血圧の発現はある程度予想できていたと思われます。ただ、本来の脳卒中後の神経保護作用に必要な投与量は、起立性低血圧を起こす投与量にくらべ非常に少なくて済む、と考えていたのだと思います。とはいっても、動物実験で起立性低血圧を再現するのは難しく(これは私も経験したことがあります)、開発担当者もヒトで実際に確認するまでは正直分からなかったのではないか、と思われます。

DPP‐4阻害薬でおこった発疹(薬疹)は、動物試験ではまず予想できず、臨床試験で初めて見つかることが多いです。薬疹で中止になった事例は、私もいくつか知っています。第I相臨床試験が行なわれるときは、「薬疹起きるな!」と思う研究者も多いのでは、なんて思います。臨床試験をクリアして市場に出た薬でも、薬疹がでることはよくあり、決して珍しい事例ではないと思います。

まとめると「どれだけ動物で実験しても、ヒトと動物との間にはギャップがあり、完全にヒトでの薬の作用を予想することが出来ない」というのが、第I相臨床試験が中止になる理由です。実は、これは第I相臨床試験に限らず、どの段階の臨床試験でも当てはまります。

最近は、ヒトiPS細胞などを用い、よりヒトに近い条件で化合物の薬効や毒性を評価しようという動きもありますが、やはり細胞で分かることと丸ごとのヒトを用いて分かることとは異なる、と言わざるを得ません。

現状においては、できるだけ数多くの項目の臨床検査を行ない、初期のうちに副作用を見つけ、危険な作用を持つ化合物をふるい落とす、という地道な作業をしていくしかありません。

この作業を効率的に行なうためには、これまでの臨床試験の失敗を多くの製薬会社で共有化し、毒性に対する「嗅覚」を鋭くすることが大事だと思います。その点で、今回のエーザイからの発表は大変意味のあるものではないかと思います。

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[ 2009/07/25 23:36 ] 薬の話 | TB(-) | CM(-)
 

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Author:薬作り職人
十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。

薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。

観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。


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