
世界トップレベルの学術雑誌Natureに、「マウスを長生きさせる化合物」についての論文が発表されました。
Rapamycin fed late in life extends lifespan in
genetically heterogeneous mice
Nature. 2009 Jul 16;460(7253):392-5.
この物質は「ラパマイシン」。モアイで知られるイースター島の土の中から発見された物質で、海外では免疫抑制剤や抗がん剤として使われています。このラパマイシンは、酵母やハエに投与するとその寿命が伸びる、ということは報告されていたのですが、今回の論文では、よりヒトに近いマウスで、寿命を延ばす作用が確認されました。
ヒトで言うと60歳くらいのマウスに、ラパマイシンを混ぜたエサを食べさせ続けると、オス・メスの性別に関係なく寿命が9-14%長くなりました。ここで言う寿命とは、「90%のネズミが死ぬまでの時間」と定義されています。
この結果は、アメリカ国立老化研究所で実施されている老化抑制物質の探索プロジェクトから得られました。このプロジェクトは、世の中で長寿に関与するとされている化合物をマウスに飲ませ続け、寿命が伸びるかどうかを調べるという、至って単純な研究です。3つの独立した研究施設で試験が行われ、いずれの研究所においても有効である、と確認されて初めて寿命を延ばす化合物であると判定します。
アメリカ国立老化研究所のサイトによると、これまでアスピリンやシンバスタチン(コレステロール低下薬)、緑茶のエキスなどの化合物を評価したのですが、今回初めてラパマイシンが寿命を伸ばす効果を示した、とのことです。
ラパマイシンが、無脊椎動物で寿命を延ばすことは知られていました。しかし、ヒトのようなほ乳類については、ラパマイシンが寿命に影響するという結果は、これまで報告されていませんでした。今回の論文によると、マウスに効率よくラパマイシンを飲ませる技術を開発したことが、今回の実験結果につながったとのことです。
ラパマイシンを普通に口から飲ませただけでは、ラパマイシンは十分に血液の中に入りません。そのため、数年間かけて特別に工夫したエサを開発することで、ラパマイシンを安定して投与することが可能になったそうです。
ラパマイシンが、なぜマウスの寿命を延ばすのか、という原因については、この論文では何も結論していません。細胞レベルではラパマイシンが作用する酵素タンパク質は分かっているのですが(TOR)、このタンパク質が丸ごとの動物の寿命にどう関係しているかは分かっていないのです。
今回の結果は、正常なマウスの寿命が延びたという結果だけを示しています。一方、ヒトの寿命は日頃の生活習慣によって引き起こされる、成人病などの病気に大きく依存しています。そのため、ラパマイシンを飲めばヒトの寿命もグンと伸びる、なんて単純な話にはならないと思います。ただ、老化によって引き起こされる痴呆や体力の低下などを防ぐ作用は、もしかしたらあるかもしれません。
この論文のタイトルを見て長寿の薬ができるかな?とも思ったんですが、こうやって記事を書いてみると、やはり長寿のためには、健康を維持するための運動・食事・睡眠、が一番大事のような気がします。
↓↓いつも応援ありがとうございます。m(_ _)m↓↓。早くも夏バテ気味、気合いの応援ポチをお願いします。
人気ブログランキングへ(モバイルの方はこちらから)
- 関連記事
-