薬作り職人のブログ
製薬会社研究者の視点から見たいろんな話。
さよなら。
今日は、液体窒素タンクに保存している細胞さんの棚卸し。

この10年近く、実験に使われることなく
液体窒素の中で長いこと眠っていた細胞さん。
必要、不必要を判断して、不必要なものは廃棄となります。

今日、10年前に使ってた細胞さんとさよならしました。

この細胞さんを使ってたプロジェクトは、
製薬会社3社で激しい競争があったのですが、
私の会社では、10年前にプロジェクトの中止が決まりました。

このプロジェクトで開発していた薬の場合、
実験が進むにつれて副作用が起きることが明らかになり、
その副作用は、私たちが目的とする薬効と
全く同じメカニズムで起きると分かりました。

つまり、薬を効かそうとしたら、同時に副作用も起こるのです。

薬効と副作用のバランスをいかにとるか、
さじ加減で副作用のコントロールできるのか、
副作用が起こるとしても、
その副作用をカバーできるほどの有用性があるのか。

この辺りの駆け引きがしばらく続き、
結局は中止という結論に達しました。

その後、数年は他社さんもがんばっていたのですが、
結局は、どの会社でも開発中止。
10年経った現在に至るまで開発に成功した会社はありません。
やはり、副作用に勝る有用性がない、というのが原因でしょう。

今となっては、このプロジェクトの復活は無理、
と判断せざるを得ません。

細胞さんには何の罪もないのですが、
過去のプロジェクトを引きずっていても仕方ありません。
私の判断で、思い切ってさよならすることにしました。

液体窒素のタンクから細胞さんのチューブを取り出し、
オートクレーブ(圧力釜?)で高圧高温で殺菌すると作業完了。

幸い、今使ってる細胞さんとは、ようやく息があって来た感じ。
この娘とは、まだまだ長い間おつきあいしたいものです。

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