ゾフランはセロトニンの働きを抑制します。ゾフランは、生体内のセロトニン受容体(セロトニンは5-hydroxytryptamine, 略して 5-HTともよばれるので、以下、セロトニン受容体を5HT受容体と表します)というタンパク質の作用を抑制します.。セロトニンは、5HT受容体に結合することで、細胞にシグナルを伝えるのですが、ゾフランはこのセロトニンの作用を抑制します。
セロトニンと吐き気とはどのような関係があるのでしょうか。
5HT受容体は、消化管に分布している神経(求心性迷走神経)に存在しています。求心性迷走神経とは、消化管からのシグナルを脳へと伝える神経です。この求心性迷走神経は、脳の嘔吐中枢という部分に繋がっており、セロトニンにより活性化されます。嘔吐中枢は、文字通り吐き気を催すシグナルを出す所であり、求心性迷走神経により嘔吐中枢が刺激されると、吐き気のシグナルが出力されます。
抗がん剤が消化管へ到達すると、抗がん剤の刺激により、消化管の細胞(EC細胞という種類の細胞です)からセロトニンが放出されます。このセロトニンが、求心性迷走神経の5HT受容体を刺激し、嘔吐中枢を通じて吐き気を催すのです。ソフランを抗がん剤投与前に服用すれば、EC細胞からセロトニンが放出されても、ゾフランによりセロトニンの作用は抑制され、求心性迷走神経が活性化されることはありません。つまり、抗がん剤による吐き気を押さえることが出来る訳です。
生体内には、数多くの5HT受容体が存在しており、現在10種類以上の5HT受容体が知られています。これらの中で、ゾフランのターゲットとなる5HT受容体は5HT3受容体です。以前紹介したイミグラン(片頭痛の薬)が作用する受容体は、5HT1Bおよび5HT1D受容体でした。ゾフランは5HT3に対する作用が強く、5HT1Bおよび5HT1D受容体など、他のセロトニン受容体に対する作用は弱い(もしくはほとんどない)薬です。ゾフランのような薬を5HT3受容体選択的な薬と呼びます。病気に関連する特定の受容体に対して選択的な薬剤は、副作用を少なくできるという大きな利点があります。選択性は薬作りの上での重要な指針となっています。
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