
新型インフルエンザについては、様々な情報が流れているのですが、感染症の専門家で構成されている「日本感染症学会」が分かりやすい情報を発表しています。
とりあえず感染拡大は一段落しそうですが、秋以降の流行に対する参考になると思います。
要点は
・今回の新型インフルエンザは決して軽症とは言いきれず、秋以降の第2波は、十分に起こりうる。
・今回の新型インフルエンザに対応した、医療体制の準備体制の更なる整備・改良が必要。
・今後、新型インフルエンザとのおつき合いは続けて行かざるを得ない。
・ほとんどの症例は軽症であるが、基礎疾患などのハイリスクをもつ人に取っては重篤になりうる。
・不要不急の外出を避け、人ごみにはなるべく出ないこと、外出時にはマスク着用、互いの咳エチケットの遵守、外出後のうがいと手洗いが必要。
です。
以下、長くなりますが、一部を引用させていただきます。
情報の整理に役立てば幸いです。
S-OIVというのは、今回の新型インフルエンザの略称です。
ー引用はじめーーーーーーーーーー
今回のS-OIV が感染力・伝播力は強い一方で、発症時の臨床的重症度は季節性インフルエンザ(seasonal influenza)と同程度ではないかと楽観視する意見も強まっています。しかし、米国CDC が中心となってまとめた米国カリフォルニア州内の4 月15 日から5 月17 日までの流行状況の報告では5%以上の例が入院し、その1/5(全体の1%)は
ICU で治療を受けたことも明らかにされております。これをわが国に当てはめると、毎年の季節性インフルエンザと同様に1,000 万人以上がS-OIV に感染した場合、短期間に10 万人以上がICU に入院することになります。このことからも感染症を専門とする本学会の立場からは、S-OIV は現時点でも軽症であると言い切ることはできません。さらに、今秋以降は1968 年の香港かぜ以来の大流行が起こる可能性は極めて高くなると多くの専門家が考えています。
本年2 月17 日に厚生労働省が発出した「新型インフルエンザ対策ガイドライン」は高病原性鳥インフルエンザを想定したものであって、しかも水際撃退作戦を想定したいわば行政機関向けといえるガイドラインであり、今回の新型インフルエンザが実際に流行して蔓延する際には、一般医療機関における対応は当然異なってしかるべきです。
(中略)
インフルエンザがウイルス感染症であることが分かってから、及び抗生物質が実用化されてからの新型インフルエンザ(1957 年からのアジアかぜ、1968 年からの香港かぜ)では我が国でいずれも4 万人~7 万人が亡くなったと報告されています。香港かぜは、1968 年~69 年の第1 波では2 万人程度と死亡者数が少なかったものの、翌年の第2 波で5 万人を超える大きな被害が出ています。現在の人口に外挿敷衍すると8 万人から9万人の死亡者となり、比較的軽かったと思われがちな香港かぜは実は大きな流行であり、国民や社会への影響は大きく、特に当時の医療関係者の苦労は相当なものであったと思われます。
今回の新型インフルエンザ(S-OIV)が今後大流行した場合、わが国の死亡者数や死亡率が香港かぜの場合を大きく超えるようなことはないと思われます。しかし、これまで流行してきた季節性インフルエンザでは毎年1 万人前後の死亡者が出ていて、医療現場ではその都度多忙を極めていますから、数万人の死亡者が出る流行が起これば入院ベッドが不足し、人工呼吸器や救急車が足りない、病院や診療所の外来は混雑を極めるなど、準備の不足は医療現場の大混乱となって現れるのは必至です。
(中略)
また、20世紀の新型インフルエンザは、国内では、すべて2回の流行を起こしている事実を理解して対策を考えることも重要です。世界では、時に3回の流行も記録されています。前述のごとく、スペインかぜは1918~19年の大規模な第1波、1919~20年のやや規模の小さな第2波と2回流行しました。アジアかぜは、1957年春の第1波、秋の第2波とやはり2回流行しました。香港かぜでは1968~69年の第1波は小さな流行でしたが、翌1969~70年に大きな第2波の流行となりました。ですから、最初の流行が小規模に終わっても、決して油断は出来ないのです。今回の新型インフルエンザ(S-OIV)が、現在は症状も軽く、患者数も比較的に少なくても、今年の秋か、冬に大きな流行になると専門家が警戒しているのは過去の大流行の事実からです。
(中略)
過去のどの新型インフルエンザでも、出現して1~2年以内に25~50%、数年以内にはほぼ全ての国民が感染し、以後は通常の季節性インフルエンザになっていきます。現在流行している香港かぜもこのようにして季節性インフルエンザとなった歴史を持っており、今回のS-OIVもやがては新たなH1N1亜型のA型インフルエンザとして、10年から数十年間は流行を繰り返すと見込まれます。すなわち、今回の新型インフルエンザ(S-OIV)の罹患を避けることは難しいのです。
(中略)
今回のS-OIVの流行では、初発地のメキシコを除けば死亡率が通常の季節性インフルエンザのそれを少し上回る0.1%台を現時点で示しており、軽症例が多いとみられています。一方、多数の死亡例が出たメキシコでは、発症から受診までの期間の長短が死亡率と相関している(死亡例のほとんどが発症から1週間以上を経て初診)と言われています。また、死亡例の多くは細菌性肺炎を併発していたとも言われています。
(中略)
今回のS-OIVの流行では細菌性肺炎と脱水が主な入院の契機であり、64%が基礎疾患や合併症を持っており、主なものは慢性呼吸器疾患、免疫低下~不全状態、慢性心疾患、糖尿病、肥満であるとしています1)。しかし、今回のS-OIVの流行ではこれまで大多数の患者が軽症で改善治癒しています。たとえ肺炎を併発したとしても多くは軽症であり、在宅での治療が可能ですし、わが国の市中肺炎ガイドラインはその目安を提示しています。
(中略)
流行が懸念される時期には不要不急の外出を避け、人ごみにはなるべく出ないこと、外出時にはマスク着用、互いの咳エチケットの遵守、外出後のうがいと手洗いが必要です。新型に対するワクチンは、本年の秋から冬にかけて予想される流行には間に合わない可能性も考えられますので、ハイリスク群においてはノイラミニダーゼ阻害薬の予防投与も考慮すべきです。現実的には患者との接触後1週間前後の予防が考えられます。
(中略)
マスクの有効性については賛否両論があります。日本では肯定的な意見が多く、一方、欧米では否定的な意見が多いため、現実にカナダや米国では一般の人はマスクを着用していません。しかし、数年前のSARSの流行時にはサージカルマスクやN95マスクが院内感染予防に効果があったとする報告12)や一般的に呼吸器ウイルス感染の防止対策の一環としてマスクを含めた総合的な対策が有用であるとするシステマティックなレビュー報告があり、WHOは後者の報告を引用して今回の新型インフルエンザ対策としての市中でのマスク着用を勧めています。ただし、マスクは正しく着用しなければ効果はありません。うがいの有用性については、インフルエンザそのものに対しての効果という訳ではありませんが、上気道感染症やインフルエンザ様気道疾患に対する予防効果が認められるという報告があり、同様に急性呼吸器疾患等に対して手洗いの予防効果が認められるという報告もあります。
ー引用おわりーーーーーーーーーー
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