FC2ブログ

薬作り職人のブログ

新薬のアイデアを考える人から見たいろんな話。

2020年が終わります。 はてなブックマーク - 2020年が終わります。

丸5年ぶりのブログ執筆です。

この5年間、薬を作るというよりは、薬作りに関わる人の間を取り持つ仕事を主にやってきました。自分の仕事が薬に直接はつながることはありませんでしたが、周りの人が蒔いた薬の種を育てるお手伝いは微力ながらできたのではないかと思っています。

ただ、人の間を取り持つというのは気力も使うものです。5年前の時点で、PCの前に座ってブログを書くという作業に大変なストレスを感じていたのは確かです。薬作りの世界は日々進化しているので、ブログのネタはどんどん入っては来るのですが、それを咀嚼しわかりやすくアウトプットすることは、実は自分の本業で常に行っているということもあり、プライベートの場に持ち込む余裕がなかったのが実情です。

新型コロナ感染症(特に治療薬やワクチン開発)についても、このような緊急事態に薬剤開発がどうあるべきか、規制当局がどう承認審査に臨むべきか、など、いろいろ考えるところがありました。それ以外にも、製薬業界を取り巻く状況につき、自分の中でも咀嚼しきれないところは多く、大晦日の今日に至ってももやもや感が残っている感じです。

この1年、このもやもや感をどうするか、ということをずうっと考えてきました。まだ自分の中で答えは出ていません。ただ、やはり「もやもや感」はアウトプットしない限りは晴れることはないのだろうとも思います。

2021年は、2020年の様々なもやもや感をスッキリさせるための方策が見える年になればいいな、と思っています。それがブログという形かはともかく、来年の大晦日にはいまより晴れやかな気持ちでいたいですね。

このエントリーをはてなブックマークに追加

[ 2020/12/31 21:33 ] お薬作りの日記 | TB(-) | CM(-)

この一年 はてなブックマーク - この一年

2015年もあっという間に大晦日となってしまいました。

個人的には、いろいろと得るものが多い1年でした。

プライベートでは、インプットに勤しんだ一年でした。大学時代の数学(微積分、線形代数)や物理学(力学)の教科書を、証明の一行一行を追っかけて読むということを、一年通じてやってきました。教科書にして4−5冊はあったでしょうか(途中のものも含む)。ノートに数式を書いて、行間の省略された部分を埋めていく作業をすることで、知ること、考えること、そして論理を組み立てること、のすべてを堪能する事ができました。こういうことは、もっと若い時にやっておけばよかったと思いつつも、一年間、飽きることなく続けることが出来ました。まだまだ途中ですが、これは、来年も続けていきたいと思います。

お仕事は、可もなく不可もなく、と言う感じでしたが、海外相手のお仕事にはだいぶ慣れてきました。去年まではおっかなびっくりだった英語でのコミュニケーションも、下手は下手なりにという割り切りと場数を踏んだせいか、大分上達したのではないかと思います。海外出張の時、体力が追いつかないというのが困り者なのですが、来年はこの辺りを何とかするというのが課題でしょうか。

去年、今年とアウトプットの活動は低調(というかほとんどしていない)状態でした。いろいろと書きたいことがあったりはしたのですが、他の色んなものの魅力に負けてしまいました。頭の中を整理整頓するやり方は、去年・今年の「インプット」の中で大分身についてきたような気がするので、これをアウトプットの方に行かせたらいいなぁ、とは思っています。

とりとめのない一年のまとめですが、来年も、無理せずマイペースでやっていきたいと思います。
このエントリーをはてなブックマークに追加

[ 2015/12/31 22:46 ] お薬作りの日記 | TB(-) | CM(-)

春のはじめに聞いた話。 はてなブックマーク - 春のはじめに聞いた話。

3月、関西で大きな学会があり、久しぶりに大学の時の友だちと会って話をすることが出来ました。彼は、製薬会社の企画部門で、私と似たようなお仕事(新規プロジェクトの立ち上げとか)をしています。近況を一通り話し合って、「お互い大変だよね」とお約束の言葉を交わしたあと、ちょっとだけお仕事の話をしました。

 

その中でも盛り上がったのが「プラセボ効果」のお話。友達の会社の研究所では、「プレセボ効果を消す薬」の研究を開始しようとしてるそうなのです。

 

プラセボ効果とは、「プラセボ(偽薬)と言う、効き目ある成分が何も入っていないくすりを服用しても、患者さん自身が、自分が飲んでいるくすりは効き目があると思い込む」効果のことです(製薬協ホームページ)。このプラセボ効果、薬作りの鍵となる作用です。

 

お薬の効果を調べる臨床試験では、患者さんの症状が改善したとしても、それがプラセボ効果なのか実際の薬(実薬)の効果なのが一見して分かりません。そこで、プラセボだけを飲む患者さんのグループ(プラセボ群)と実薬を飲む患者さんのグループ(実薬群)を設定し、それぞれの群での投薬後の変化を比較します。もし、プラセボ群と実薬群の間に意味のある差(統計学的に有意な差、と言います」があるとき、プラセボ効果を上回る「薬による差」がある、と考えます。

 

さて、このプラセボ効果、単なる思い込みの効果ということで、その様の効果があったとしても大したことはない、と思われるかもしれません。しかし、実際の臨床試験では、「プラセボ効果が大きすぎて薬の作用が検出できない」という結果が良く現れます。このような状況が起こりやすいのは、患者さんの「感覚・印象」を元に薬剤の効果を判定する場合です。代表的な例としては、「痛み止め」の臨床試験でこのような状況がよく起こります。「痛み」は心理的要因が非常に強いことから、思い込みによる改善作用も表れやすいのです(逆に、心理的要因により痛みが悪化したり治りにくくなる状況もあります)。

 

薬を作るときには、まず動物実験で効果を確認し、それから患者さんを対象にした臨床試験に進みます。動物実験の段階では、動物にはプラセボ効果は起こらないとされているので(もしかするとあるのかもしれませんが、その検出は難しいでしょう。逆に評価者の恣意性のほうが問題になります)、薬の作用が明確に検出できます。しかし、これが患者さんを用いた試験となると、プラセボ効果が大きく現れる状況が容易に起こりうるので、薬の効果を示すことが格段に難しくなるのです。

 

もちろん、プラセボ効果を越える「真の薬効」を持つ薬を得ることが一番大事です。しかし、痛み止めの評価のようなプレセボ効果が出やすいタイプの臨床試験では、「真の薬効」を捉えるためには多くの患者さんを用いた大規模な試験が必要となります(プラセボ効果と実薬の効果の差が小さいので、臨床試験の対象となる患者數を多くしないと効果が検出できません)。一方、臨床試験の初期の段階では、少数の患者さんを対象にした予備的な試験を行い、安全性と最低限の効果を確認する必要があるのですが、患者さんの数が少ないと、プラセボ効果と実薬の効果の差が非常に取りにくくなります。有望な薬の候補があったとしても、試験方法の問題(患者数とプラセボの問題)で、その薬効を見逃してしまうという不利な状況は、製薬会社にとっては頭の痛い問題です。

 

というわけで、「プラセボ効果を消す薬があれば、このような状況が改善できるのではないか」というアイデアが出たというわけです。

 

「プラセボ効果を消すには、プラセボ効果の仕組みを知らないといけない」ということで、まずは動物でプラセボ効果が出せないか、という方向で研究は進むようです。ただし、プラセボ効果を評価するには、薬の概念「これを飲むと楽になる」が理解できる事が必要なので、それなりに賢い動物を使わなくてはいけない、というのが最初の壁のようです。それなら、社員自らプラセボを飲んで実験対象になる、というアプローチもありなのでは、と思ったのですが、「プラセボを出しても、裏の裏を読んでかえってややこしくしてしまうヒトが(特に研究者には)多いので、結果の解釈がややこしくなる」のだそうです。騙されるくらい素直でピュアな心を持つ動物で、まずは調べてみたいのだそうです。

 

「私なんかは、素直でだまされやすいので、ぜひ調べてほしい」と思ったりしたのですが、エイプリールフールの標的にされそうだったので、この言葉は胸のうちにしまっておきました。。。。

 

ーーーーーーーーーーーーーー念のため、ここまでネタ。

 

さて、今年のエイプリールフールのお話はプラセボにまつわるお話でした。「プラセボ効果を消す薬の開発」の部分は作り話ですが、プラセボ効果が薬の開発で大きな影響を与えているのは確かです。実際、臨床試験の対象患者として、プラセボ効果の出にくい患者さんを選ぶ(事前検査を行なって選抜する)などの対応がされる場合も多いと聞きます。また、痛みのようなプラセボ効果が出やすい主観的症状については、客観的な評価指標(血液検査などで得られるバイオマーカーと呼ばれる指標)を探す試みも行われていますが、なかなかうまく行っていないようです。もうしばらくは、いかにプラセボ効果とうまく付き合うか、というレベルの対策を行うしかないようですね。

 

 

 

 


このエントリーをはてなブックマークに追加

[ 2015/04/01 06:30 ] お薬作りの日記 | TB(-) | CM(0)
 

スポンサードリンク

この日記のはてなブックマーク数

このブログが生まれて
最近のコメント
プロフィール

薬作り職人

Author:薬作り職人
十数年、新薬の研究に携わる研究者(薬理系)でした。2012年4月から、企画職として、新薬のアイデア作りなどの仕事に取り組むことになりました。

薬学生向けの季刊誌MILで、「名前で親しむ薬の世界」「薬作り職人の新薬開発日記」って言うコラムを連載してました。

観光地で売ってるミニ提灯集めてます。妻子持ち(2児の父)、嫁さんからぐうたら亭主と呼ばれます。


薬&提灯 詳しくは
病院でもらった薬の値段
http://kusuridukuri.cho-chin.com/

お薬の名前の由来
http://drugname.onmitsu.jp/

ミニ提灯データベース
http://kentapb.nobody.jp/
でどうぞ。


本ブログに関するご質問・ご意見などはこちらまで↓
ご使用の際は、@マークを半角に直してください。

kentapb@gmail.com

トラックバック


Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...