薬作り職人のブログ
製薬会社研究者の視点から見たいろんな話。
ラ・カンパネラ。
今日は、娘が通ってるピアノ教室にいってきました。

いつもは使えない、プロ仕様のグランドピアノを使って、演奏をさせてくれるということで、生徒さんがたくさん集まって代わる代わる演奏をします。ちょっとした演奏会。

グランドピアノは凄く大きくて、娘の姿が隠れてしまいそう。それでも、堂々と短い曲を娘は弾いてくれました。親フィルターがかかってるけど、よかったなぁ。

子供たちの演奏が終わると、プロのピアニストが模範演奏を見せてくれます。子供たちをピアノの周りに呼び寄せて、すぐそばでピアノの演奏を見せてくれます。指の動きをしっかり見てくださいね、という趣向。

曲は、リストの「ラ・カンパネラ」。超絶技巧、などとよばれてる難曲。

動画のリンクはこちら。

子供たちは、食い入るように見ています。私たちは、後ろの方で聞いてるだけなので指の動きは見えません。さっき、youtubeで始めて見て、改めて凄いと思いました。

プロの技を目の前にして、やる気が起きたかな。年寄りは、「こりゃ無理だ」なんて思ってしまいそう。だけど、眼を輝かせていた子供たちは「やるぞ!」と前向きになってくれてると思いたいです。

しかし、生のピアノ、よかったなぁ。



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2009/11/24(火) 00:16:33| 家族の話| コメント:0
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  • ハエの踊りと新薬開発。
    新薬開発には、いろいろな基礎研究の結果が生かされています。今日は、そんな実例の1つを書いてみたいと思います。

    現在、新薬開発における安全性評価の場面で、かならず登場するタンパク質があります。それは「hERGチャネル」と呼ばれるタンパク質で、新薬候補化合物の心臓に対する副作用の原因となることが知られています。

    hERGチャネルは、心臓の筋肉細胞(心筋細胞)の表面にある「イオンチャネル」(細胞表面にある開閉するトンネルのようなもの)というタンパク質です。hERGチャネルは、イオンチャネルのなかでも、カリウムイオンを選択的に通す「カリウムチャネル」と呼ばれるものの一種です。

    カリウムイオンは電気の運び屋なので、カリウムイオンがhERGチャネルを通過すると、心臓の電気活動が変化します。そのため、正常な状態においては、hERGチャネルは、心臓の電気活動によって引き起こされる規則的な拍動(心拍のリズム)をコントロールする重要な働きを担っています。

    新薬候補化合物のなかには、hERGチャネルの働きを止めてしまうものがあることが知られています。このような化合物の一部は、ヒトに投与した時に心臓の働きを乱し、死につながる不整脈を起こすことがあります。

    そのため、新薬候補化合物を人に投与する前には、hERGチャネルに対する化合物の作用を必ず調べる必要があるのです。

    さて、このhERGチャネルが見つかったのは、実はショウジョウバエの研究がはじまりでした。1960年代、ショウジョウバエの研究をしているうちに、不思議な挙動をもつハエが見つかりました。このハエは、エーテルと言う麻酔薬を嗅がせると、まるで踊りを踊るように足を振るわせたのです。このハエを調べると、ある遺伝子に変化(変異)が起こっていることが分かりました。

    「踊りを踊る」という特徴から、この変異遺伝子の名前は、その当時はやっていた、ゴーゴーというダンスにちなみ、ether-a-go-go(ether:エーテル、go-go:ゴーゴー)と名付けられました。この遺伝子からできるタンパク質は、カリウムチャネルとしての働きをもつことがわかったのですが、しばらくの間、応用研究には至りませんでした。

    さて、この研究が再び脚光を浴びたのは、1990年代のことです。ヒトの遺伝病で、QT延長症候群と呼ばれるものがあります。QT延長症候群は、心電図の波形のQTと呼ばれる部分の長さが長くなる(QT延長)という特徴をもっていて、突然、死に至る不整脈を起こすことがあります。

    QT延長症候群が遺伝するということで、この原因となる遺伝子の探索が行なわれました。その結果、一部のQT延長症候群の原因となるタンパクとして、ヒトの心臓でether-a-go-goと非常に良く似たタンパク質が見つかったのです。このタンパク質は、ヒト(human)のether-a-go-goということで、hERGと命名されました。hERGは、カリウムチャネルであることがether-a-go-goの研究から分かっており、このhERGチャネルに異常があると心臓に異常が起こることは、非常に納得が行くものでした。

    ここで、もう1つ、製薬業界を悩ませていた問題が登場します。市場に出回っていた複数の薬に副作用としてQT延長症候群と似た不整脈(QT延長)を示すものが見つかったのです。これは、非常に大きな問題となり、薬の販売中止や、原因究明に向けての研究活動が始まりました。

    ここで、hERGチャネルと新薬開発の出会いが起こります。QT延長を起こす化合物は、hERGチャネルの働きを止めてしまうことが、細胞レベルの実験で分かったのです。これは非常に大きな成果でした。QT延長を起こさない化合物を作るには、hERGチャネルに対する作用が弱い(もしくはもたない)化合物を作ればよいからです。

    現在では、新薬を探す段階(スクリーニング)で、hERGチャネルに対する作用をもつかどうかを調べることが普通になりました。新薬開発において、hERGチャネルに対する作用を調べ、安全性を確認することは、国際的なガイドラインで定められています。

    ハエの踊りと医薬品の安全性評価のつながりは、基礎研究が応用研究に役立つことの良い例であると思います。基礎研究は、いつ応用研究に適応できるか分かりません。基礎研究を大事にすることは、未来の私たちにとっての大きな貯金になることを忘れてはいけません。


    追記:この記事は、「[発声練習] 異分野の成果があなたの分野の発展に役立った事例はありますか?」の一環として書きました。興味があれば、以下のリンク先も音連れて見てください。

    [発声練習] 異分野の成果があなたの分野の発展に役立った事例はありますか?
    http://d.hatena.ne.jp/next49/20091119/p1




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    2009/11/22(日) 23:38:50| 薬の話| コメント:1
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  • 1980年代の恩恵を受けたものとして。
    1980年代の懐古番組を良く見かけます。

    歌、文化、ニュース、、私は、1980年代に小学・中学・高校・大学を過ごしたので、1980年代はまさに青春まっただ中。いろんな想い出が、体の中に染み付いています。社会人になった90年代以降よりも、やはり80年代の方が記憶としては鮮明ですね。

    あのころは、世の中がとてもポジティブで元気だったと思います。バブルの直前、お金にまかせて浮かれてる人も確かにいました。しかし、そうじゃない普通の子供だった私も、目の前の明るい未来を信じて、高揚感の中を過ごしていました。

    この十数年、子供たちの目の前には、80年代のあのポジティブな雰囲気があるのだろうか、と不安になります。今は今で、現在を楽しんでいるとは思うのですが、未来に対するポジティブな気持ちがあるかどうかで、人生というのは結構大きな影響を受けるのだと思うのです。

    私たちの世代は、80年代の恩恵を受け、90年代以降の世の中を生きてきました。昔は良かったと懐古しながら、ただ、自分の足下を固めるだけで精一杯だったような気がします。

    しかし、自分が40代になった今、遅まきながら子供たちのために新しいレールを敷いて、ポジティブな未来を作らなきゃ行けないのではないか、と思うようになりました。研究者としての仕事はもちろん大事だと思っていますが、それ以外にも何か出来ることはないのか。まずは、自分の頭で考え、意見を持つことから始めなくては行けないのではないか、、なんて。

    今は、ブログやTwitterというツールを使って、いろんな世代の人とコンタクトを取り、意見を交換できるようになりました。そんな環境の中、みんなである一定の流れをつくり、世の中になんらかの影響を与えることが出来たらなぁ、などと思ったりしている、今日この頃です。

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    2009/11/22(日) 00:32:44| ひとりごと| コメント:2
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  • 世の中への恩返し。
    薬学生向けの雑誌MILでやってる連載、最新の掲載号が届きました。

    読者の感想欄を見てみると、こんな感想が。

    「興味深い内容ばかりで、勉強にもなるので、毎回楽しみにしています。特に『名前で親しむ薬の世界』が好きです」

    何度見ても、こういう感想はうれしいし、これからの原動力になりますね。

    製薬関連の研究職をやってるヒトは、常にプロジェクトの失敗と向き合って生きています。理由は色々あるけど、失敗が当たり前の世界。自分が関与しているプロジェクトが製品化され、患者さんの元に届くという機会はなかなかありません。

    自分がやっている仕事の内容を論文として世の中に問う、ということも、競争が激しいこの業界ではなかなか難しいものがあります(これは、会社によって差があるのでしょうが)。特許も、最近は生物系は名前を載せてもらいにくいし。

    はたして、自分のやってる仕事が世の中のためにたっているのだろうか、という複雑な思いをもつ創薬研究者は、自分以外にもいるんじゃないかなぁ、と思ったりします。

    というわけで、薬学生さん向けの雑誌での連載というのは、せめてもの社会への恩返しになってるのかな、と思っています。連載の機会を与えてくださったMILの編集部の方々には、感謝でいっぱいです。

    さて、それでは次回の連載の原稿を書くことにします。ネタは決まってるので、あとは一気呵成!


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    2009/11/20(金) 23:55:24| お薬作りの日記| コメント:1
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  • 「輸入インフルワクチンで不妊」は嘘・デマです。
    ブログの読者さんのコメントで初めて知ったのですが、どうも「輸入インフルワクチンで不妊が起こる」というデマが流れているようです。

    「輸入インフルワクチンで不妊が起こる」というのは嘘です。根拠は全くありません。

    出所となっているサイト(あえて晒しません)によると、以下のような話。

    「輸入インフルエンザワクチンには、添加剤としてMF-59というアジュバント が使われている」
    「MF-59は、もともと動物用の不妊ワクチンに含まれていた物質である。だから、不妊ワクチンと同じ組成をもつ輸入インフルエンザワクチンを打つと不妊になる」

    アジュバントというのは、ワクチンの効果を高めるために使われる免疫増強剤の一種です。詳しくは、以下のリンクを参照してください。


    ワクチンの隠し味「アジュバント」



    今回のデマでは、「アジュバントとして使われているMF-59に不妊作用がある」ということになっています。これは大きな誤りです。

    不妊ワクチンは、「精子または卵子を構成する特殊なタンパク質を体内に投与し、体内でこのタンパク質に対する抗体を作って、精子や卵子に対する免疫反応を起こし、不妊を起こす」というものです。

    ここで、気をつけなくてはいけないのは、「不妊ワクチンが不妊を引き起こす原因となる物質」は、「動物の精子または卵子を構成する特殊なタンパク質」だということです。アジュバントは、「動物の精子または卵子を特殊な構成するタンパク質」に対する抗体を産生する「手助けをする物質」に過ぎません。

    だから、アジュバントだけを投与しても、不妊は起きません。「動物の精子または卵子を構成する特殊なタンパク質」を含まないインフルエンザワクチンに、アジュバントが添加されたからと言って、不妊が起こることはありません。

    新型インフルエンザワクチンについては、余り情報がいきわたっておらず、さまざまな憶測がながれています。現在のところ、安全性については、通常の季節性インフルエンザワクチンと同等程度の副作用が認められるとされています。

    インフルエンザワクチンには、まれに重い副作用(接種者100万人について1-2人のギラン-バレー症候群)が認められるのは事実です。しかし、この副作用はアジュバントがなくても起こるものです。ワクチンを接種しないことでインフルエンザが悪化して起こる、脳症や重度の肺炎が起こるリスク(確率)の方が、遥かに高いと考えられます。

    私なら、迷わず家族にワクチンを接種させます(新型インフルエンザワクチンが手に入ればの話ですが)。

    インフルエンザワクチンの接種は任意ではありますが、少なくとも「輸入インフルワクチンで不妊が起こる」という理由で接種しないということだけは止めてください。

    デマによって健康被害が起こることだけは、避けなくてはいけません。

    追記:輸入ワクチンについては発がん性の恐れがある、との噂も見かけますが、問題はないと考えます。発がん性の有無については、詳細な検討が必要です。しかし、今回のワクチンについては、投与量が少ないということ、ぜいぜい2回の投与のみであるということ、だけを考えても、問題はないものと考えます。


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    2009/11/19(木) 20:49:02| お薬作りの日記| コメント:5
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